未就学児のママ・パパも必読!算数を教えるときのコツは、「教えない」こと!?/【連載】おうちで今すぐ実践できる!ずーさんの算数子育て術Vol.07

パパママ、育児お疲れ様です!

math channnelマガジン編集部のずーさんです。
普段は算数パズル塾を開きながら男児3人を育てています。

これまでの連載では、おうちでできる算数の声掛け働きかけのコツを単元ごとにお伝えしてきましたが、今回は少し趣向を変えて、「こんなことに気をつけたらすべての算数の場面で有効だよ!」っていう話をしていきたいと思います!
どうぞ、単元ごとの話の根底に置いちゃってください!

テーマはズバリ、「算数の教え方のコツ」

子どもにどんな問題にも必要な算数の力をつけてもらうため、教えるまわりの大人が気を付けたら良いこと。それは一体何なのか?って話です。

コレですね……算数に限らず、子育てにおいてすごーく大事なことだと思っています。

算数なんて別にどうでもいいわと思っている親御さんにも是非聞いていただきたい!!
そして我が子に算数でつまずいて欲しくない親御さんにはもちのろんで聞いていただきたい!!

というわけで……鼻息荒くいきますよ!

レッツゴー!!

LET’S GO!!

結論から言うと

算数を、教える。

漢字を教える。であれば、やることはハッキリしていますが、算数となると答えを伝えるのは違うし、ちょっとどうしたらいいか迷いますよね……

特に算数が苦手だった親御さんにとっては、
将来我が子から「ママ(パパ)これわかんないから教えて!」なんて言われたら困るぞ!という思いがあるかもしれません。

「今はさくらんぼ計算っていうのがあるんでしょ?そんなのわかんない!」
「小3くらいまでなら教えられるかもしれないけど、高学年なんてムリムリ!」

なんて声は実に多いです。

けれども、どうぞ安心してください。結論から言いましょう。

教えなくて、いいですよ!
教えなくて、いいんです。

算数の教え方のコツは、教えない!

「教えない!」

です言っちゃった……)

「ちょっと!」

教えないって、アナタ! そんな意地悪、許されると思ってるの? 子どもが「教えて!」って言ったきたら「どれどれ……」って教えてあげたくなるのが親の性ってものでしょうが! それなのに教えないだなんて。だいたい教え方のコツを話しますよって言ってるのに教えなくていいですよって、意味わからんからでっきまっせん! ラッスンゴレラーイ!

……って、思いました?まあまあ、落ち着いてください。

要するに、「教える」って言葉にはがあるんですよね

私たち算数の先生や学校の先生は確かに算数の授業で「教える」こともあるわけですが、みなさんの思う「教える」とはちょっと乖離があるかもしれないのです。

で!

まずは教える(=算数の力をのばす)コツとして
教えない!」という意識をもっていただきたい。のです。

なぜ「教えない!」を念頭におくのか。ちょっと極端な例をここでお伝えしましょう。

仲良し2人組の女の子

先日、こんな光景を目(耳)にしました。

小学5年生の女の子が2人、並んで宿題をしています。
この2人を仮にAちゃん・Bちゃんとしましょう。

2人は、長期休みになると配られる、5教科がまとまった薄いドリル(きっとみなさんもみたことがありますよね?)——それの算数ページを解いているところでした。

Aちゃんがスラスラと進める横で、Bちゃんの手はゆっくり。
Bちゃん、ちょっと算数苦手なのかな?と思っていたら、案の定ある問題でフリーズしてしまいました。
それをみたAちゃん、すかさずBちゃんに教えます。

「これはね、ここが62°だから、39°と48°とたして、360°からひけばいいんだよ。」

「へー!」

「だから、360−(62+39+48)!」

BちゃんはAちゃんが教えてくれた通りに式を書き、丁寧に筆算をして答えを書いた後、次のページへと移りました。

どうでしょう?Aちゃん、優しいですか?

いや、実際優しかったですよ。たぶん普段からこんな風に2人で宿題をしているんだと思います。Bちゃんの手が止まっているのにすぐ気が付いて、やり方を説明してあげて、Bちゃんも助かった!ありがとう!って感じでした。

ただ……Bちゃんは件の問題が「できるように」なったでしょうか?

たぶん、できないままだと思います。Aちゃんによって宿題の丸は1つ増えましたが、Bちゃんがこの問題でやったことといえば、Aちゃんの言う通りに式を書いて計算しただけで、どうやったら問われている角度を求められるか考えてはいないからです。

そう!

算数は!!

考える教科なんですよ。

そして人は、教えてもらっちゃうと、なかなか考えられないんです。

登山中に遭遇した分かれ道で道案内の矢印書いた看板があるのに、どっちに進んだらいいかな?なんて考えないじゃないですか。

「わかった!」が、算数の醍醐味

ここまで読んで、

「いやいや……」

「いやいや、いくらなんでもそんな解答集の式を丸写しするような教え方なんてしないでしょ」
と思う方もいるかもしれません。

確かに先ほどの角度の問題は、式そのものではなくて
「まずこの角度を求めてみたら?」とか
「四角形の角を全部たすと360°だよ」などと言ったヒントを出すような教え方ができるかと思います。

けれども、さくらんぼ計算わり算の筆算速さ割合の文章題など、やり方を伝えたくなってしまうような問題は結構あるものなんすよ。(突然の後輩キャラ)

他にも、「全部足して個数でわればいいんだよ。」の平均とか
「逆数をかければいいんだよ。」の分数のわり算とか。
受け取り方次第では考えることを放棄してしまいます。

逆に、

ん?

「え?算数って、そういうものだよね?やり方を習って、それに沿って解くんだよね?」という方もいるかもしれません。

そんな方は……その……おそらく……
違ったらごめんなさい!おそらくは!
学生時代、あまり算数・数学を面白いとは感じなかったんじゃないでしょうか。

この例えが適切かは自信がないのですが……

例えば、ジグソーパズルがあって、

そのピース、ここだよ!

あなたがひとつピースをとった横から「あ、それはココだよ。」「あ、それはさっきのやつの隣。」なんて教えられたら、それはもうただの作業で全然楽しくないじゃないですか。

もしくは、「冷蔵庫の中に隠れている動物ってなーんだ」というなぞなぞを出されて、

「れ」「い」「ぞ」「う」「こ」!

考えているそばから「実際の冷蔵庫の中じゃなくて「れ」「い」「ぞ」「う」「こ」ってひらがな5文字に注目するんだよ。」って言われたらどうですか?分かった時の喜びが半減しませんか?

算数は基本考える教科なので、やり方をなぞったら正解はできますが、面白くなくなってしまいます

もちろん、正解することで楽しさや喜びを見出す場合もありますが、私は是非考えて分かった時の楽しさを味わってもらいたいなあ、と思います。

だから、教えない!

とはいえ……子どもが「教えて」って言ってきたのに、ただただ黙っていたら何も解決しませんよね。

そんな宿題などの対応のコツについては次の機会にじっくりお伝えしたいと思いますが、ざっくりとした方針だけ言うと、「思考のターンを子どもからうばわない」という話になります。

で、この「思考を譲る」という姿勢は、小学生に関わらず、もっと小さいうちから意識すると子育てがとっても楽になると思うので、後半はそれについてお話しましょう。

旅行の支度は誰がする?

突然算数から離れますが……

みなさんの家では、家族旅行に行くとしたら、その支度を誰がしますか?
お子さんは自分の分は自分でできますか?
また、持ち物リストは誰かがかきますか?

旅行の準備、誰がやっていますか?

もし、お子さんの荷物を全部おうちの人が準備しているなら…
旅行の支度という行為に対して子どもが考えるチャンスはゼロですよね。

けれども、「何をいくつ用意する」ってリストがあるなら、
少なくとも「どこにしまってあったっけ…?」「どうリュックに詰めよう?」なんてことは考えることになります。

個数の指示がなければ、旅行の日数にあわせて考える必要があるでしょうし、

行程だけが知らされてあとは自分で準備するとなれば、
「ぼうしはいるかな?」
「足元が濡れてもいいようにサンダルで行こうかな?」
「移動時間が多いならゲームももっていこう!」
「前回の旅行では浴衣があるからパジャマは持って行かなかったけど、使ってみたらいつもと違って嫌だったから今回は持っていこう。」
なんて、考えることは山のよう!

支度を子どもがするのであれば子どもにとって考えることがたくさんあるけれど、
支度を親がしてしまうと、考えるべき事も丸々親がやることになる……
これが、私の言いたい「思考のターンを奪っている」状態です。

もちろん、生後2か月の赤ちゃんが自分の旅行の支度なんてできないので、
月齢によってどのくらい任せていいのかは違います。

でも、(これは私がそうだったわけですが……)私たちが思っているよりずっと早い段階で子どもはいろいろできるんです!

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「え、そうなの!?」

だから、是非任せてみて、考えるチャンスをあげてください!

別に失敗したっていいんですよ。準備して、不足があったら「これも持っていったら?」と提案すればいいし、余計なものを持って行ってしまったら、帰ってきて片づける時に「これ要らなかったな」と自分で修正できます。

それより、過不足ありつつも一人でやりきったら、子どもは自分を誇らしく思えるじゃないですか。その自信が、またやってみよう!しっかり考えよう!につながるのです。……たぶん。

具体例いきますよ!

というけで、自分が何か子どもの行動を考えそうになったら、それを子どもに渡す!ということを日常で繰り返してみてください。

(今日は午後から雨が降る予報か。ってことは…)傘持っていきな!

ではなく、

パパママ

今日の帰り、雨が降るみたいよ。

(えっと、餃子だから…)醤油とラー油と小皿持って行って!

ではなく、

パパママ

夕飯は餃子だから必要なもの運んでおいてくれる?

(あ~もうこんな時間。まだお風呂にも入ってないじゃん)はやくお風呂にはいりなさーい!

ではなく、

パパママ

今8時だけど寝るまでにやること終わってる?

(明日のお弁当何にしよう?卵焼きとハンバーグとミニトマトと…緑がないか。ほうれん草?ってことは……)

ではなく、

パパママ

明日のお弁当何がいい?

キッズ

ハンバーグ!

パパママ

いいね~。他には?

キッズ

卵焼き!

パパママ

赤いものも欲しいな~

キッズ

じゃあ、ミニトマト入れる~

パパママ

おお。ハンバーグと卵焼きとミニトマトだと……緑色がありませんねえ

キッズ

ほうれん草とコーンのやつ好きだから、緑はそれにして!

パパママ

じゃあ、そうしよ。買わなきゃいけないのは何だろう?

なんていうように、自分が考える時間をなくして、自分がしようとしてたことを子どもにさせてみる感じです。

小学生なら、

パパママ

この料理、暖かいままパーティーに持って行きたいんだけどどうしたらいいかな?

とか

パパママ

今日のお出かけ、ママはユニクロとスーパーに用があるんだけどパパはいつもの眼鏡屋さんに行きたいんだって。
〇〇ちゃんは本屋さんの他に行きたいとこある?お昼はジョリパで食べるとして、どの順番で行こうか?

なんて、相談をすると、頼られた感があってノリノリで考えてくれるかも!

さあ、試してみよう。

どうですか?思考の機会、渡せそうですか?

え?
これのどこが「子育てが楽になる」んだって?

バレたか~
そうなんです。超めんどくさいんです~

このやりとりをするには、子どもが自分(親)の思い描いた行動をとらなくても文句を言わない覚悟が必要ですしね。

えへ。バレたか~

でも、嘘をついたつもりはないんです。

まず、さきほどのようなやりとりをした場合、行動を指示することが減って、子どもが嫌な思いをしない分、
納得感をもって動けるんですよ。
指図された!イライラ→せっかく言ってるのに聞かない!イライラ……みたいな悪循環が減らせます。

そして、何事も「自分でやりたい」「お手伝いしてあげようか?」などと子どもが思っているその時にさせてみるのがいちばん効果を発揮するじゃないですか。

そのタイミングってだいたい意欲は高くても運動能力が追いついてなかったりで親はハラハラしますし、自分でやったほうが早い、めんどくさいと何百回も思います(笑)けど、その経験が、後々の子どもをぐっと後押ししてくれるんです!!
つまり、大きくなった時に楽になる!!

しかも、思考を渡す癖がつくと、その感覚が算数を教える時にも役に立つ。
(どんな風に役立つかはまた今度の機会に!)

だったら、ハラハラするけど大変だけど、任せてみてたくさん考えられるように仕向けちゃいましょう。
大きくなって「うるせえ」「別に」「どうでもいい」しか言わなくなったら……もう親はきっと介入はできないっす。小さくて可愛いうちがチャンスです(笑)

もっと小さなお子さんにも

ちなみに、思考チャンスを潰さない感覚は、子どもが試行錯誤する時間を長くとるのに似てるかな~と思います。

これを読んでいる方のお子さんが何歳かわかりませんが……
もし2・3歳なのであれば、

・靴を履く
・ボタンをかける

など、子どもがするには時間がかかる作業ってありますよね。
それをなるべく口を出さず手を出さずで子どもがHELPを要請するまでは待つ感じです。

これをすると、こちら(親)の見守る姿勢が育つので、自分でやらずに子どもにさせるっていう習慣ができてきます。

こんなふうに箱に穴があいていて、円柱とか三角柱とかのカタチを入れて遊ぶおもちゃ、あるじゃないですか。

いわゆる「立体型はめパズル」です

それで一緒に遊んでる親子を児童館などで見るんですが、
子どもが手にしているピースがどの場所に入るか、教えてあげるのがちょっと早い気がするんです。
もう少し待てば自分で見つけられるだろうになーって。
もちろん「できないー!」って癇癪を上げたり、「入らないじゃん?」って諦める前にピタッとハマる気持ちよさを感じさせてあげたいので、さじ加減が難しいですけどね。

ちなみにちなみに、お子さんがもっと小さい方にもお伝えしたいことがありまして。

なんか、赤ちゃんと遊ぶとなると意外に30分もしないうちにネタがつきたりするんですけど、そんな時は「遊んであげなきゃ!」って頑張るより「観察」するのがいいんじゃないかと思います。

あ、なんか手のばしてる。
あ、あれ取りたいのかな?

なんて風に、どんなものに注目して何を考えているかを想像する癖がつくと、靴を履くのもボタンをとめるのも待ちやすいのではないでしょうか。

最後に

なんだか育児の指南書みたいになってしまいました。

で?おまえはこれをきちんと実行しているのかって?
まさか。

赤ちゃんと2人きりの部屋でいないいないばあを全力でやった後、すんと真顔になってしばらく「何やってんだろ」って放心状態だったことも、「はやくしてー」といいながら靴を履かせたことも思考を奪って指示ばかりだしたこともいくらでもありますとも。

今回、どう書いてもこの文が上から目線みたいになって、何回も書き直して、編集部デスクにはご迷惑かけました……
私、パパママを苦しめたいわけじゃないんですよ!言われた通りになんていかないよっていう時や場合があるのはよくわかる「隣人」ですので……
できそうな時に頑張って、お互い我が子の成長を楽しみましょうね♪

「楽しもう!」「おー!」

というわけで!

算数の教え方のコツその1、「大前提は教えない!そのために思考の機会を渡す」というお話でした。

これまでの6回でお伝えした声かけ働きかけのコツも、この前提を元にやりとりを紹介しているので良かったら見直していただけると、「はぁ~ん、そゆことね。」とより納得してもらえるかと思います!

それでは!

thank you!

最後までお読みいただきありがとうございました!
次回は単元の話に戻って「分数」についてお伝えしていきます。お楽しみに!

■バックナンバーはこちら!

■お子さんへの声かけについて、こちらの記事もどうぞ!

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この記事を書いた人

考えぬく力を育てる 教えてくれない算数パズル塾Pazoo 主宰。 学年や教科書内容に囚われず、算数の感覚がつかめる問題や試行錯誤を楽しむ問題を作成し、『難しい問題はラッキー』を合言葉に教室を運営している。 その他、「生きる力を育む」をコンセプトにした塾や地域の子育て支援などを通して、日々子どもと戯れている人。 math channelではコンテンツ制作に関与し、算数パズルやクイズのネタを探っている。 早稲田大学商学部卒。中3、小6&小3の子どもを育てる3児の母(photo by 大江香子)