「算数好き」「数学好き」は、いつ育つ?/連載【「算数・数学が好き!」な子に育てるために、今、できること】Vol.01

math channel magazine編集部です。

突然ですが、30年前の家庭を想像してみてください。

携帯電話やパソコンはまだ普及しておらず、電話と言えば固定電話か公衆電話。
情報収集は新聞かテレビか雑誌。
一般の家庭で「テクノロジー」を呼べるものは、子どもたちが遊ぶスーパーファミコンくらいだったかもしれません。

20年前まで時を進めても、携帯電話が普及したりパソコンがある家庭は増えたものの、ケータイはiモード(かEZwebかJ-sky)、ネット回線はADSLと、「家庭にテクノロジーが浸透している」という環境ではありませんでしたね。

今の家庭と比べてみると、わずか20年、30年で、テクノロジーが一気に私たちの暮らしの中心に入り込んできたことがわかります。
しかも、その流れはどんどん加速しています。

10年後、20年後、30年後は、どんな社会になっているのでしょうか?
暮らしや経済活動はますますテクノロジーと一体化し、それを駆使できるどうかで、人生の選択肢が今以上に大きく異なる社会となっていることでしょう。

そんな時代を生きていく今の子どもたちには、どんな力が必要なのでしょうか。
それは、テクノロジーと関連性が高い“理数分野”の学びに対する「苦手意識が少ないこと」が一つのキーワードかもしれません。

人生の選択肢を広げるために、得意まではいかなくてもせめて「苦手ではない」こと。
そして、できれば「得意」「好き」になってもらうこと。

理系分野の中でも算数・数学は基本中の基本であるため、「算数・数学が好き!」という子は大きな強みを持っていると考えます。

では、どうすれば算数・数学が好きな子になるのでしょうか?
生まれつき? 遺伝? 環境? うちの子でも好きになる?? 今からでも遅くない?
などなど、様々な疑問について、この連載を通して一緒にじっくりと考えていきましょう。

算数好きはいつから?アンケート調査結果

今回は、「算数好き」「算数嫌い」はいつから始まるのか?について、考えていきたいと思います。

math channelでは、2019年に「算数・数学に対する意識調査」というアンケートを実施しました。SNSを中心に呼びかけ、492名の方の回答いただきました(ご協力いただきまた皆様、本当にありがとうございました!)。

「算数が苦手」な人にとっては、「算数が好き」な人の意識を知ることはなかなかできません。
「あんなのが好きな人の頭の中って理解不能」と思ってしまうかもしれませんね。

自分もそうだったから、わが子がどうすれば算数が好きになるのかも想像できない。これはとてももったいないことです!

そして、「算数が好き」な人も、「なんでこんなに面白いものが苦手なんだろう?」と「苦手な人」の意識を理解できず、わが子に対しても「どうすれば好きになるのか」というアプローチが思いつかないかもしれません。

そんな、両者の間にある溝を埋めるべく、こちらのアンケートを活用していけたらと思っています。

では、今回のテーマである、「算数好き」「算数嫌い」はいつから始まるのか?について。
まずはこちらの結果をご覧ください。

2019年版「算数・数学に対する意識調査」(c)math channel

14%が「小学校入学以前から」46%が「小学校の頃から」で、半数を超える60%「中学に入る前から算数が好き」と回答しています。

つまり、「数学」になる前の「算数」の時代から好きだった子が、その後もずっと好きでいる、という状態です。

身近な人との関わりが、カギを握る

では、どんなきっかけで好きになったのか? 理由を見てみましょう。

小学校以前からの人

  • 1÷2、3-4など、幼稚園や小学校低学年のころに学校で教わらないことを親と話しているうちに好きになりました。(27歳,社会人)
  • 幼稚園のときからパズル的要素のゲームが好きでした。将棋もその頃からしてました(25~29歳,社会人)
  • たぶん、小学校の体験入学で ひし形!と答えて褒められたこと(50~54歳,社会人)
  • 数字が好きでした。なんでも数えて、並べて、遊んでましたね(55~59歳,社会人)

小学生の頃からの人

  • 学校の作図の授業で、解けた人はどんどん難しい問題に取り組ませてくれたのがとても楽しかった(48歳,社会人)
  • 父親と、ピラミッドを作るための必要なレンガ数は?という問いをいっしょに考えてから(25~29歳,社会人)
  • 中学受験勉強でテストの解き直しで、わからなかった問題がわかったときの爽快感が好きになった(20~24歳,大学院生)

中学生の頃からの人

  • 塾の先生の説明がわかりやすく、テストでどんどん点が取れるようになったから(19歳,大学生)
  • 中学2年生の頃、数学の先生が授業内で軽く虚数について触れ、複素数を調べていき、ロマンを感じた(15~19歳,高校生)
  • 中学の時数学とは別に数学パズルや大学入試レベルの問題を中学の知識で解くような授業があり、頭をフル回転させて解く感覚が好きだった(20~24歳,大学・短大・専門学生)

* * *

こうやって見てみると、
小学校入学以前、もしくは小学生時代に好きになった人は、保護者など身近な大人との日常の何気ないかかわりの中で算数を好きになった。
中学生からは、学校や塾の先生数学の面白さを実感できるアプローチをちりばめてくれたおかげで数学の楽しさに気づいた。
という人が多いようです。

算数が嫌いな幼児はいない!?

では、「算数・数学が嫌い」な人は、いつからそうなのでしょうか?
アンケート結果はこちら。

2019年版「算数・数学に対する意識調査」(c)math channel

43%が「中学校」26%が「高校」となっていて、7割近くが中学校以降に嫌いになっていることがわかります。

また、特記すべきこととして、「算数がかなり嫌い」と答えた人で「小学校入学以前から」と答えた人はなんと0人(!!)、「まぁまぁ嫌い」と答えた人の中に1人いるだけで、「小学校入学以前から算数が嫌い」と答えたのはなんと全体の0.2%にすぎないのです。

つまり、小学校入学前の時点では、ほとんどの人が算数に対してポジティブな印象を持っているということ!
ここに、算数・数学が好きな子を育てるヒントが隠されているように思います。

算数嫌いは、「とある分野」のせい!?

それでは、「算数・数学が嫌い」と答えた方のその理由を見ていきましょう。

小学生の頃からの人

  • 長期休暇中、学校の宿題とは別に母が買ってきたドリルが難しく、間違えると叱られたため(32歳,社会人)
  • かけ算の筆算からわからなくなりそのまま泥沼でした。今となってもよくわかりません(25~29歳,社会人)
  • テストで良い点をとれなかった。計算が嫌いだった。割合がさっぱり分からず、ものすごく苦手意識があった(35歳~39歳,社会人)
  • 小4か5年の代数がわからなかった。なぜ〇や△で置き換えて考えなければならないのかわからなかった(40~44歳,社会人)

中学生の頃からの人

  • それを解くことがなぜ必要なのか、人生にどう作用するのかが分からず、自分ごと化できなかった。(44歳,社会人)
  • 理解が追いつかなくなり、そのままそれを取り戻す機会がなかったこと(40~44歳,社会人)
  • 証明問題という、言葉で説明するということに違和感があった(45~49歳,主婦)

高校生の頃からの人

  • 中学までは割と得意だと思っていたが、高校からむずかしいと感じたから。(23歳,大学院生)
  • 三角関数にて数字以外のものを使わないと数字を扱えないことにやり場のない人類の敗北感とやるせなさを感じて、数学を知ることは全て無駄だと思うようになった(30~34歳,社会人)
  • 関数の辺りから苦手意識を持つようになった(20~24歳,大学・短大・専門学生)
  • 全くわからなかったから、嫌いというか正確には「わからない」から面白くない、楽しみ方がわからないと言った方が正しい(25~29歳,社会人)

* * *

「算数・数学が嫌い」と答えた方のコメントを見ていると、どの時点から嫌いになった人も共通して「この分野が苦手で嫌いになった」という方が多いことに気づきます。
中には、「わからない分野が段々と増えていき、処理するスピードが追いつかなかった」という方も……。

また、「算数・数学を学ぶ意義を見出せない」「数学がなんのために存在するのかわからない」という理由から、モチベーションを失ってしまった方も多く見られました。

この辺りにも、「算数・数学を苦手にしない」ヒントがまた隠されているかもしれません!

このアンケートでは、好きな数学の分野や好きになったきっかけなど、様々な視点から数学を好きになるアプローチについての回答も集まっています。
次回は、引き続きこちらのアンケートの結果から、「算数・数学の分野」「算数・数学が好きになる勉強法」についてみていきながら、「算数・数学好きの子を育てるためのアプローチ」を考えたいと思います。

どうぞお楽しみに!

(文責:洪愛舜)

Vol.02はこちら

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この記事を書いた人

ほん(洪愛舜)のアバター ほん(洪愛舜) math channelマガジンデスク/編集者・ライター

math channelマガジンデスク担当。育児・教育ライター/編集者。math channelお手伝いライター。立命館大学理工学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーの編集・ライターに。特に育児・教育系の雑誌やwebメディアの企画、構成、取材、執筆や、書籍の編集・執筆に携わる。小学生1女1男2児の母。実は子どもがmath channelの講座を受講する保護者でもある。