『”対話的な学び”って何だ!?』〜②誰と対話的な学びを行うか/しっしー先生の探究ノート〜知ってるようで知らない教育キーワード

こんにちは!math channelのしっしーです。

対話的な学びと参加型の授業についての2本目の記事となります。前回はアクティブ・ラーニングと対話的な学びとは何かなぜ大切なのかについて取り扱いました。

アクティブ・ラーニングとは知識をただ受け取るだけでなく、能動的に学ぶことです。そして対話的な学びによって、子どもたち理解を深めることができ、教員子どもの理解度の把握がよりスムーズになるということをお話しました。

今回の記事では、どのように対話的な学びを実現するかについて、より具体的に一緒に考えていきましょう。
対話の定義は何でしょうか?子どもは誰と対話を行うのでしょうか? 日々の教室やご家庭での教育活動のヒントになれば幸いです。

「対話」を誰と行うか

手持ちの国語辞典で調べてみると、対話は以下のように説明されていました。

向かい合って話すこと。また、その話。

新明解国語辞典 第5版

向かい合って話をすること。また、その話。

旺文社国語辞典 第9版

国語辞典だけでは少し不十分な気がするので、もう少し調べてみましょう。前回の記事でお話した通り、文科省は「対話的な学び」を”interactive learning”と訳しています。interactionを英英辞書で調べてみました。

interaction: 1. a process by which two or more things affect each other

                  (拙訳: 2つ以上のものが影響を与え合う過程のこと)

                   2. the activity of talking to other people, working together with them etc

                  (拙訳: 他の人と話したり、一緒に取り組むなどの活動のこと)

(interaction | ロングマン現代英英辞典でのinteractionの意味 | LDOCE)

以上を踏まえて「対話的な学び」のことを「話すことなどを通じて、他者と相互に関わりあうことによる学び」と考えてみましょう。

それでは、この「他者」とはいったい誰を指すのでしょうか?
調査したところ、他の子ども教職員地域の人などが紹介されていました1。この記事ではさらにお家の方も含めて考えてみたいと思います。
それぞれの相手との場合でどのような対話的な学びになるでしょうか?

教員との対話を通じた学び

まずは教員との対話的な学びです。
授業での子どもの対話相手として一番わかりやすいのが「先生」ですよね。

ここで大切になるのは、発問や声かけの仕方だと思います。どのような発問や声かけが、子どもの創造性を高め、深い学びへとつながるのでしょうか?
これについてはクリエイティブ編②の記事クリエイティブ編③の記事で触れているので、参考にしてみてください。

別の角度から1つお話したいと思います。
先ほど述べたように、英語のinteractionは「影響を与え合う」ことだと説明されていましたが、教員と子ども達の間でも影響の与え合いが起こると思います。
教員が子どもの理解に応じて声かけを変え、そのことが新たな子どもの学びにつながることもあるのです。

全国算数授業研究会の実践報告の記事2では、以下のようなエピソードが紹介されています。

小数の授業で先生がうっかり、243の代わりに2430などと間違えて黒板に書いてしまいました。1の位に「0」が入ると、表す数が大きく変わってしまいます
しかし、ここで小数点以下の末尾に「0」が入る場合を考えると……?
2.432.430では、「0」が末尾についても同じ数を表しますね。
このことが「整数と小数では『0』の扱いが違う」ことに子どもが注目するきっかけになったそうです。

私も授業中に自分の間違いを発見し、「ごめん、何か変だね。一緒に確認しよう」と伝えたことがありますが、子ども達はいつもよりも真剣(?)に考えてくれました
教室は教員と子どもが一緒に学びを作り上げていく場です。対話によって深い学びのチャンスが生まれるかもしれませんね。

子ども同士や地域、家庭での対話を通じた学び

教室でのやりとりは、必ずしも「教員と子ども」とは限りません。
「子どもと子ども」のやりとりも学びに繋がる大切なやりとりです。

子ども同士のコミュニケーションを学びに活かすためには、授業の中でグループ活動を行うことが良いと思います。「グループ」と一口に言っても、ペアや少人数グループなど、学びの目的などに応じて人数を考慮する必要があります3

また、学習意欲発言力の違いによりグループ活動がうまくいかないことはよくあります。
教員は教室の状況を観察しながら、必要に応じてグループ人数の調整・組み替えをすることでより良い対話的な学びに繋がると思います。

そして、(小学校などで)比較的低年齢の子ども達がグループワークをする場合、あらかじめ何をするのかデモンストレーションをしたり、手順をしっかり説明することが有効です。
私も「さあ、これについて考えてみよう!」と伝えたはいいものの、「先生、何をすればいいの?」と後で質問を受けた経験は数知れず……。
教員が思っているよりも子ども達には伝わっていないと考え、なるべくわかりやすい言葉で指示を行うのが良いですね。

その他、地域の方との対話やご家庭での対話が学びにつながる場合もあります。地域の方の場合、インタビューなどで調査・話を聞き、考えを広げるなどの活動がありえますね4ご家庭での対話については、math channel magazineでずーさんが様々な例をあげています。こちらもぜひチェックしてみてください。

テクノロジーを利用した対話的な学び

さて先ほど述べたように、日本語の辞書では「対話」とは「向かい合って話をすること」であると説明されていました。
ここで読者の皆さんに質問です。「向かい合うこと」は対話的な学びの実現に必須となるでしょうか?

正解はないかもしれませんが、私の考えを体験談を交えてお話します。
私はコロナ渦にイギリスの大学院に通っていたのですが、ある授業の課題が印象に残っています。その課題は以下の2つのステップで構成されていました。

  1. トピックについて各自で調査した後、自宅で発表を録画、アップロードする。
  2. その録画を学生同士で視聴して、オンライン上でコメントし合う

オンラインで行った課題だったため、学生同士で向かい合うことはなく、対面での会話は行いませんでした。さらに言うと、コメントのタイミングは一人一人異なっていたため、時間的には「非同時的」なやりとりでした。

ここで手紙のやりとりを考えてみましょう。手紙は遠くの人と人とのやりとりで、届くまでにしばらく時間がかかります。しかしコミュニケーションは成り立ちますね。
イギリスの大学院での課題は、向かい合わない非同時的な対話的な活動でしたが、私にとってとても良い学びの機会になりました
テクノロジーを利用すると、このように様々な対話的な学びが実現できそうですね。

様々な相手との対話を通じて、学びを深くする

ここまで、「対話的な学び」の中でも教職員との対話、子ども同士や地域・ご家庭での対話や、テクノロジーを利用した対話についてお話してきました。

より実践的には、これらのパターンを組み合わせて学びを深くできると思います。「対話的な学び」とは、以下のような時系列を辿る学びがその一例です。
(実際には「対話」の前後に「思考」が行われ、このことが対話的な学びを理解する上で役立つポイントなのですが、詳しくは次の記事で触れることにします)

  1. 教員発問をする
  2. 子ども同士対話する
  3. 地域家庭調査・対話する
  4. 再び子ども同士対話する
  5. 最後に発表する

このような時系列の学びにテクノロジーも一役買ってくれます。仕事が忙しい地域の方とのやり取りや交流は、インターネットを使って同時双方向的オンデマンドで可能になるかもしれません。

また、ICTを活用すれば国内の遠方・国外にお住まいの方と意見交換することも容易です。対話的な学びを実現するために、テクノロジーは大いに役立ちます。

このように、様々な「他者」(=相手)との対話を教育活動に取り入れることで、より良い学びの可能性を追求できると思います。お読みいただきありがとうございました。
次回の記事でも「対話的な学び」をどう具体的に実現するか、引き続き一緒に考えていきましょう。

参考資料
(1) 主体的・対話的で深い学び
(2) 中村佑 (2022).「『対話したくなっちゃった』数値設定〜教材研究ミスを子どもたちが生かす〜」. 『算数授業研究 2022』No.140, p.55
(3)1 主体的・対話的で深い学びの 実現に向けた授業改善 (p.42)
(4) 新しい学習指導要領の考え方ー中央教育審議会における議論から改定そして実施へー

(文責:宍倉 一徳)

「クリエイティブな学び」についても考察しています。こちらもあわせてどうぞ!

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この記事を書いた人

学習塾、中学校、高等学校などで英語指導の経験あり。教育心理学、CLIL(内容言語統合型学習)・教科横断型学習などに関心があります。 math channelの提供する「楽しい」×「算数」という新しい教育の形に惹かれてメンバーに。これまで算数のコンテンツ制作やアフタースクール講師を担当。math channel magazineでは、ライターとして、教育に携わる方々に少しでも役立つコラムを執筆するために奮闘中。好きなかけ算九九は「4×4=16」。