こんにちは! math channelのしっしーです。このmath × Englishコラボ談義では、表現や文章題を題材にして、算数と英語のコラボレーションを扱っています。
前回の記事では、「なぞなぞ算数×英語」を紹介しました。
今回も引き続き、「なぞなぞ算数×英語」の第二弾です。
マス(math)田くんは英語で算数の学習を始めて3ヶ月になりました。
そんなマス田くん、今回は英語で書かれた算数の文を3つ日本語にしました。ところがまた6つの用語を間違えて訳してしまい、変な日本語の文が生まれてしまっています。
前回は入門・初級編でしたが、今回は中級編。
全て日本の小学校で習う算数用語ですが、難易度が少しだけ上がっています。マス田くんの文章を読んでいて「何か変だな?」という違和感に気づくことができますか?
正しい日本語、そして元々の英語は何でしょうか?今回もマス田くんと一緒に楽しみながら算数と英語を学習していきましょう!
中級編①:分数(fraction)について
You can cancel a fraction by dividing top and bottom of a fraction by common factors.
共通の要因で分数の上と下を割ると、分数(fraction)を中止することができます。
さあ、上の日本語文は何を間違えているでしょうか?まず、分数を「中止する」というのはよく分かりません。分母と分子をどうするのでしょうか。また、意味は何となく分かりますが「共通の要因」というのも算数の用語ではなさそうです。
正解の日本語は、それぞれ「約分する」「公約数」となります。それでは、どんな英語を間違えて訳してしまったか分かりますか?
それでは答えです。
「約分する」は英語で「cancel」と言います。分母と分子を「キャンセル」するから「約分」。言われてみると納得ですね。日本語では「友達と遊ぶ予定をキャンセルする」などと日常的に言いますが、算数の文脈では「cancel」は分数の約分という特殊な意味で用いられるので注意が必要です。
「公約数」は英語で「common factor(s)」です。「factor」で一番最初に思い浮かぶ意味は「要素、要因」ですが、算数では「因子、因数、約数」という意味で用いられます。common は「共通の」なので、common factorは「共通の約数」、つまり「公約数」。例えば2と10の公約数は1と2ですね。2/10は公約数2で割ることで、1/5に約分することができます。
中級編②:長方形の面積について
The length of this rectangle is 3 centimeters and its width is 2 centimeters. 3 times 2 equals 6, so the area of the rectangle is 6 square centimeters.
この長方形の長さ(縦)は3cm、幅(横)は2cm。3時の2は6、つまり長方形の面積は6四角センチメートルである。
明らかに「3時の2」というのはおかしいですね! また、「四角センチメートル」という表現は耳にしたことがありません……。
正しくは「3かける2」そして「平方センチメートル」です。マス田くんはどんな英語を間違えて訳してしまったのでしょうか?
正解は以下です。
まず「3かける2」は英語で「3 times 2」。おや、この表現はどこかで…..。英語を学習したことがある人は、比較表現の学習の際にこんな文に出会ったことを思い出しませんか?
John runs 3 times as fast as Kevin.
(ジョンはケビンより3倍足が速い)
この「times」は「〜倍」という意味。英語では「時」や「回数」を表す「time」という表現を、倍数を表す際にも用います。
今回もまさにこのケースで、「2の3倍」のことを「3 times 2」と表すというわけです。面白いですね。
以前の記事でも述べましたが、英語と算数のコラボレーションにより、算数の学習を通じて英語の理解も深めることができます。
「平方センチメートル」は「square centimeter(s)」です(イギリス英語ではcentimetre(s))。初めて聞くと頭が「??」となってしまうかもしれませんが、考えるとすぐに納得できます!
1 square centimeterは、1辺が1cmの正方形、つまり1cm×1cmの「square」を指します。この正方形が何個あるかということで、面積をsquare centimetersという単位で表すというわけです。
同様に、立方体は英語で「cube」と言うため、1cm×1cm×1cmのcubeがいくつあるかということで、立方体の体積は「cubic centimeter」(立法センチメートル)という単位で表します。
実は日本語の「方」も「四角の一辺の長さ」という意味なのですが1、現代では「方」という言葉を使うことがあまり無いので、「平方」「立方」という言葉もやや分かりづらくなっています。むしろ「square」「cube」を元にしている英語の方が理解しやすいかもしれませんね。
中級編③:半径 x 半径 x …..?
さて最後は式の問題です。マス田くんは何を間違えて訳してしまったでしょうか?
radius × radius × 3.14 × angle of the sector ÷ 360 degrees = area of a sector
半径 × 半径 × 3.14 × 部門の角度 ÷ 360の程度 = 部門の面積
何だか暗号のようですね…..。「radius」 が「半径」という意味であることは過去の記事で扱いました。
間違っている日本語は「部門」「程度」。
正しくはそれぞれ「扇形」「度」です。元々の英語はいったい何だったのでしょうか?
それでは正解の発表です。
「度」は英語で「degree」です。これは一番簡単だったかもしれませんね。「degree」は普通「程度、度合い」という意味で使いますが、数字と一緒に用いられる時は「度」という意味となります。これは角度だけではなく、温度なども表すことができます。例えば熱が38度あると言う時は「I have a fever of 38 degrees」などと言います。
「扇形」は英語で「sector」と言います。「sector」は少し難しい用語で、産業などを表す際に「public sector」(公共部門)、「private sector」(民間部門)などと言うのですが、section(セクション)が「部分」という意味であることから分かるように、sect-の語源は「切る」です2。
算数の文脈でsectorと言うと、円から切り分けられた「扇形」のことを表します。恐らく、昔の日本人は「扇」に馴染みがあったので、円の一部のことを「扇形」と名付けたのではないでしょうか(ちなみに英語でも「扇」を「fan」と表すこともできます)。
マス田くんと復習しよう
いかがでしたか?今回も色々な表現が出てきましたね。出てきた算数用語をマス田くんと一緒に整理して覚えてみましょう。
- cancel 約分する
- common factor 公約数
- times かける
- square centimeter 平方センチメートル
- degree 度
- sector 扇形
久しぶりに扇形の公式も耳にした方も多いと思います。ぜひもう一度この記事を読んで、復習してみてくださいね。なぞなぞ算数英語、まだまだ続きます。次回の記事をお楽しみに!
参考資料
(1) 広辞苑第5版
(2) リーダーズ英和辞典第2版
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