英語と算数・数学をコラボレーションさせる意義って?【連載】しっしー先生のmath×Englishコラボ談義Vol.3

こんにちは!math channelのしっしーです。
最初の記事「英語で意外!な算数・数学用語」では単語に注目したのですが、前回の記事「英語で面白い!算数・数学文章題」では算数・数学の英語表現や文章題を扱いました。

英語で学ぶ算数・数学の面白さについて、だんだんと体感できてきたのではないでしょうか?(そうだと嬉しいです!)
では、英語と算数・数学をコラボレーションさせる意義はいったい何なのでしょうか?

それはまるでアフォガードのように

いきなりですが、1つの質問から始めましょう。
みなさんは「アフォガード」という食べ物を知っていますか?

アフォガードとは、コーヒーをアイスクリームにかけるデザートです。
私は大のカフェ好きなのですが、初めてアフォガードのメニューを見た時は驚いたのを覚えています。
熱くて苦いコーヒーと、冷たくて甘いアイスクリーム。これら全く別の2つを組み合わせると美味しくないような気がするのですが、これがとても美味しいんですね。
「ほろにが」の大人のデザートとして、不動の地位を築いている……そんな気がします。

甘いアイスとほろ苦いコーヒーの絶妙なハーモニー……!

実はスイーツ業界では、2つの要素を足してより美味しい食べ物を作り出すのはよくあること。和の抹茶×洋のティラミスを掛け合わせた抹茶ティラミスもとても美味しいですね!

さて、この現象は学びでも起こると思います。例えばこんな時です。

  • 数学の授業でピタゴラスの定理を学んだ後に、世界史の授業でピタゴラスという人物のことを学んだ。
  • 日本史の授業で紫式部の書いた源氏物語について習った後に、国語の授業で源氏物語を実際に読んだ。

別々の教科をコラボレーションさせることで、深い学びや、学びに対する動機づけ(モチベーション)が得られると思います。

ではその中でも特に、英語と算数・数学を組み合わせることで、どんな効果があるのでしょうか?
前編となる今回の記事では、まず英語学習の視点から見たメリット、続いて、算数・数学学習の視点から見たメリットについて具体的にお話しします。

英語学習の視点から見たメリット

英語教育では、近年内容言語統合型学習」(Content and Language Integrated Learning、CLILという教育方法がよく聞かれるようになりました。
これは言語学習と他教科で行う内容学習を統合する教育の方法です1
私自身の経験でもあるのですが、別の教科の内容を学習しながら英語を学ぶことで、英語の習得が楽しく、容易になることがあります

具体例を1つお話ししますね。

英語の学習の際に避けて通れないのが疑問文。
その中でもHowなどのWH疑問文は、初級者から上級者まで、全てのレベルの学習者にとって必須の文法項目です。
まず、<How + 形容詞>の使い方について、以下の説明を読んでみてください。皆さんはどのくらい納得できますか?

How much(名詞)は「どのくらいの量」を表す。(how muchの後に名詞が後続することもある。)

例:How much (money) does he have?

How many(名詞)は「どのくらいの数」を表す。(how manyの後に名詞が後続することもある。)

例:How many animals does Tom have?

How tallは「どのくらいの高さ」を表す。

例:How tall is he?

いかがでしょうか?「もちろん意味は分かるけど、具体的にどのような状況で使われるのか、いまいち想像しづらいな。」そんな風に思った人もいるかもしれません。

どのくらい納得できますか?

ここで算数・数学の出番です。実は算数の文章題ではHowを使った表現がよく現れるのですね。
<How + 形容詞>の使われ方に注目しながら、以下の文章題を読んでみてください。

Kevin had 15 dollars and he earned 10 dollars. How much does he have now?
(ケビンは15ドル持っていて、10ドル稼ぎました。今何ドル持っていますか?)

Tom has three rabbits. Yesterday his father brought two dogs home. How many animals does Tom have now?
(トムはうさぎを3匹飼っています。昨日お父さんが犬を2匹家に連れてきました。今トムは動物を何匹飼っていますか?)

Satoshi was 138 centimeters tall last year. He is now five centimeters taller than he was last year. How tall is he now?
サトシは昨年138センチメートルでした。今、彼は昨年より5センチ伸びました。彼は今どのくらいの背の高さですか?

最初の例では”how much“、2つ目の例では”how many“、最後の例では”how tall“を使った具体的な表現例が出てきました。
こうした文章題をいくつも読んでいくと、説明だけでは分からなかった<How + 形容詞>の使われ方がなんとなく分かっていきそうです。
単に文法の練習問題を解くよりも、表現がどのように用いられるか理解しやすいですね。

言語の学習でとても大切なのは、どのようにその表現が使われるか、つまり文脈を知ることです。
算数の文章題を通じて文脈が追加されることで、英語の理解が促進されるこれが、英語学習の視点から見た大きなメリットです。

算数・数学学習の視点から見たメリット

さて、今度は算数・数学学習の視点から考えてみましょう。英語を通じて算数・数学を学ぶすることで、いったいどんなメリットがあるのでしょうか?
まず押さえておきたいのは、2023年現在、小学校では3年生から英語の学習がスタートすることです。
いわゆる早期英語教育の流れの中、今後英語はますます身近な存在になっていくでしょう。英語に抵抗のない子ども達にとって、英語を通じて算数・数学を学習することで、以下のようなメリットが考えられます。
(この記事では2つ扱います!)

英語を通じて面白さを再発見する

前回までの記事でお話ししてきましたが、英語を通じて学ぶことで、算数・数学の面白さを再発見することに繋がると思います。
突然ですが、ちょっとしたエクササイズを行ってみましょう。以下に5つの算数・数学用語をまとめたセットを2つ用意しました。日本語では何というでしょうか?

  • face, area, angle, parallel, natural number
  • prime number, product, power, net (※立体について), identity

何となく想像ができるものもありましたか?正解は以下となります。

1つ目のセットの答え:
face (立体の)面(めん)
area  面積
angle   角度
parallel  並行の
natural number 自然数

2つ目のセットの答え:
prime number  素数
product   
power   累乗(るいじょう)
net    展開図
identity  恒等式

なるほど!

さて、ここで次の質問です。なぜ10個の用語を2つのセットに分けたのでしょうか?
実は1つ目のセットは、ある程度の日本語と英語の対応があります。

「なるほど、faceは顔だから面(めん)か!」

「日本語でもカタカナでエリアアングルって言うなあ」

自然の数だからナチュラルな数か!」

このように、何となく腑(ふ)に落ちますよね。

それに対して2つ目のセットは、日本語と英語の対応が少ない、意外な算数・数学用語です。

「えっ、素数prime(最も重要な)numberというんだ!」

productって普通は「製品」の意味だよなあ」

identity(アイデンティティ)で恒等式なの?!」

初めて知ると驚きですね。

このように算数・数学用語を英語で勉強すると「腑に落ちる用語」と「意外な用語」の2種類があります。「この用語は英語でどんな言い方をするだろう?意外性があるかな?」こう考えるとわくわくしてきますね。「そもそも恒等式って何だっけ?」など、もっと調べてみたくなるかもしれません。英語を通じて算数・数学を学ぶことで、算数・数学の面白さを再発見することに繋がると思います。

算数により親しむ

2つ目に、英語の学習に算数を組み合わせることで、ますます算数に親しむことが可能になります。
また例をあげてお話ししましょう。
私の友達が小さい頃、お家の中で「速攻足し算」でよく遊んでいたそうです。お母さんやお父さんが「1+8は?」「16+38は?」「4+9+8は?」と矢継ぎ早に質問していき、すぐに答えられるかを競うゲームです。

さあ、このゲームに英語の要素を加えてみましょう。

One plus(プラス)eight?”

Sixteen plus thirty-eight?”

“Four plus nine plus eight?”

こんな風に、お子さんにどんどん問いかけてみてください。
「9、54、21……」最初は日本語で答えてもオーケー! 慣れてきたら”Nineteen, fifty-four, twenty-one”と英語で答えてもらいます。
ちょっと難易度があがってゲームが面白くなりそうですね。足し算の練習がますます楽しくなりそうです。

「ちょっと難しい」が楽しい!

他のバリエーションもあります。「2つの数を足して10にしてね。何個思いつく?」と尋ねてみましょう。「1 + 9、2 + 8……」など出てきますね。
「-1と+11」「1/2と19/2」などの難しいパターンを考えつくお子さんもいるかもしれません。

では、これを英語にしてチャレンジしてもらいましょう。こんな風に尋ねてみてください。

Make ten!

”One plus nine, two plus eight…” 他にはどんな答えが思いつくでしょうか? お子さんと一緒に考えてみるのも楽しそうです。

今度はお子さんに部屋の中を見渡してもらいます。
「三角形の形を2つ見つけてみよう」「台形を1つ見つけてみよう」このように日本語で尋ねるのもアリですが、英語で尋ねると難易度がグッと上がります。

Find two rectangles.”

Find a trapezoid.”

さあ、無事英語の意味が分かって、図形を見つけられるでしょうか?
rectangle長方形trapezoid「トラパゾイド」は台形です)

最近のゲームでは、Easy、Normal、Hardモードなど難易度を選択することができます。
ちょっと難しいモードでプレイするのは手応えがあって楽しいですよね。
上手に英語と算数を組み合わせることで、算数ゲームがもっと楽しくなって、学習が促進されると思います。ご家庭で他にも楽しいゲームを考えたら、ぜひ教えてくださいね。

英語 × 算数・数学 には様々なメリットがある

いかがでしたでしょうか?英語学習と算数・数学学習。両方の視点から、英語と算数・数学をコラボレーションすることは意義があるということ、ぜひチェックしてみてください。次回は「算数・数学学習の視点から見たメリット」について、さらにお話ししたいと思います。後半の記事をお楽しみに!

参考資料
(1)『フォーカス・オン・フォームとCLILの英語授業』和泉伸一著、アルク

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この記事を書いた人

学習塾、中学校、高等学校などで英語指導の経験あり。教育心理学、CLIL(内容言語統合型学習)・教科横断型学習などに関心があります。 math channelの提供する「楽しい」×「算数」という新しい教育の形に惹かれてメンバーに。これまで算数のコンテンツ制作やアフタースクール講師を担当。math channel magazineでは、ライターとして、教育に携わる方々に少しでも役立つコラムを執筆するために奮闘中。好きなかけ算九九は「4×4=16」。