こんにちは!math channelのしっしーです。
前回の記事では、算数・数学と英語をコラボレーションさせる意義について、英語学習と算数・数学学習の視点からお話ししてきました。
今回は算数・数学学習の視点から見たメリットの続きです。今回お伝えしたいことを一言で言ってしまうと、英語を通じて算数・数学を学ぶことで、算数・数学により理解が深くなるということです。
大きく以下のテーマについてお話ししていきますね。
今回お話しするテーマ
- 数学の公式と英語
- ルートは根
- 有理数は比
- 海外で算数・数学を使って学ぶ
数学の公式と英語
さて、英語を通じて学ぶことで算数・数学の理解が深くなるとはどういうことでしょうか?
まず公式を覚える時を例に考えてみましょう。いきなりですが、以下の公式を皆さんはどのように覚えますか?
(これは円柱の公式です。こう書いてある参考書を目にすることもあると思います。)
V = Sh = πr2h
(Vは体積、Sは底面積、hは高さ、rは円の半径)
数学の公式を覚える時、いくつかのパターンが考えられます。
- 音読する
- 式の形(見た目)で覚える
- 語呂合わせをする
- 本質的な理解をする
- 問題演習を通じて覚える
もしかすると他のパターンもあるかもしれません。私自身の経験でもあるのですが、どんな勉強をする時でも、納得した(=腑(ふ)に落ちた)知識ほど定着します。
色々な考え方がありますが、自分の中で「腑(ふ)に落ちる」ために、そもそもなんでそんな公式になるの?と本質を理解したり、問題演習を通じて式に慣れることは大切ですよね。
そして「腑に落ちる」ためには、英語の知識もとても役に立ちます。
先ほどの円柱の公式について、少し立ち止まって考えてみましょう。V, S, h, rは覚える時になんだかわかりづらいです。なんでV、S、h、rがそれぞれ体積、底面積、高さ、円の半径を表すのでしょうか? 皆さんは分かりますか?
正解は以下の通り。円柱の面積を求めるための公式「V = Sh = πr2h」のそれぞれのアルファベットは、次の単語の省略です。
- V:volume(体積)
- S:surface area(表面積)
- h:height(高さ)
- r:radius(半径)
radiusは以前の記事でも取り上げましたね。
これは想像ですが、きっと英語を使える数学者の人が、アルファベットを使った公式を作ったのでしょう。日本人には馴染みがないので覚えづらいのですが、英語を知るとスッキリしますね。
この考えは数学だけでなく他の科目(物理など)にも当てはまると思うのですが、公式を理解する時、英語がとても役に立ちます!
ルートは根
2つ目の算数・数学の理解が深くなる例です。高校数学で「ルート」という言葉が登場します。「ルート16は4、ルート64は8」と呪文のように繰り返して勉強します……。でも「ルート」っていったい何なのでしょうか?皆さんは考えてみたことがありますか?
さまざまな説明があると思いますが、英語が一つの手がかりになります。
「ルート」は英語では”root”とつづりますが、どんな意味でしょうか?
正解は、”root”は植物の根(ね)という意味です。言い換えると、”root”は何かの根本(ねもと)のことを指します。
英英辞書で”root”を引くと、以下の例が書かれていました。
The square root of 64 is 8.
ROOT | 意味, Cambridge 英語辞書での定義
日本語で「ルーツ(起源)」といいますよね。この単語はroot(根)の複数形rootsからきています。64のルーツは8、つまり64は8から来る、ということになります。
このように英語を通じて理解すると「ルート○○」も分かりやすくなります。
有理数は比
次に、みなさんは「有理数」という言葉を聞いたことはありますか?
有理数を辞書で調べると、以下のようにあります。
実数のうち、2個の整数の比によって表される数
デジタル大辞泉 「有理数」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
整数は-2, -1, 0, 1, 2……と表される数のこと。その比で表される有理数には10, ⅕, -8などがあります。でも、なんとなくわかったようでわからない人も多いのではないでしょうか? こんな声が聞こえてきそうです。
「なんで比が出てくるの?」
さあ、また英語をヒントにして考えてみましょう。
英語で有理数はrational numberといいます。
rationalは「理性のある」「合理的な」という意味なのですが、rational numberを英英辞書で調べると、以下のようにあります。
a number that can be expressed as the ratio of two whole numbers
RATIONAL NUMBER | 意味, Cambridge 英語辞書での定義
訳すと「2つの整数(whole number)の比(ratio)で表せる数」となります。
定義は先ほどの日本語の辞書とほとんど同じなのですが、この文にrationalと似た単語が隠されていることにお気づきでしょうか?
そう、ratioとrationalは綴りが似ていますね! ratioは「比、割合」のことですが、実はrationalはratioの形容詞です。
rational number(有理数)はratio(比)で表される数のこと。
こう考えると、スッキリ理解することができますね。
ちなみに有理数の逆は無理数ですが、英語ではirrational numberといいます。「irrational」は、「rational」の頭に「ir」がついた単語ですね。
「regular(規則的な)」の反対が「irregular(不規則的な)」ということから分かるように、”ir-”は元の単語の逆の意味を表します。つまり、「irrational」とは「整数の比(ratio)で表せない数」=「無理数」を表します。
海外で算数・数学を使って学ぶ
ここまで、前半の記事と合わせて算数・数学学習の視点から見たメリットについて掘り下げて考えてきました。ルートと有理数の話はちょっと個別的な例でしたが、英語を通じて算数・数学を学ぶことで、算数・数学にもっと理解を深めることができることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
ここまで記事の中では触れませんでしたが、お子さんが将来留学や海外進学をする際にも英語で算数・数学を理解できると大きなメリットになります。これは物理などの直接数学と関わる分野以外を学ぶ時も当てはまります。
例えば私はイギリスの大学院で教育心理学に関連する分野を専攻しましたが、研究をするためには統計学の知識が必要になります。そんな時、数学英語が必須なんですね。
calculate(計算する)、variable(変数)、mean(平均)、normal distribution(正規分布)などなど・・・。例をあげるとキリがないくらいです。
いつかは海外でも勉強してみたい・させてあげたい!という場合にも、算数・数学に英語で慣れ親しんでおくととても良さそうですね。
英語と算数・数学。全く違う教科のように見えますが、コラボレーションさせることで多くのメリットがあります。ぜひ参考にしてみてください。また次の記事でお会いしましょう!
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