こんにちは。中学受験算数ナビゲーターの滝澤です。
今回は中学受験における、小5の算数についてです。
前回、前々回と中学受験と小3・小4の学習についてお話をさせていただきました。そちらもぜひご覧ください。
中学受験算数 小5の重要性
中学受験塾では、小6になる春休みくらいまでに全単元の学習が終わり、小6の4月からは小5までに学習した内容の総復習になります。
つまり、小5で学習する単元こそが、中学受験で出題される問題のすべてであるといってよいでしょう。
実際出題される入試問題の8割は小5で学習する内容です。
小5の学習がいかに集中して頑張らなければいけないかわかりますね。それではまず、主な中学受験塾に通う小5生が1年間で学習する内容を見ておきましょう。
小5で学習する主な単元
①計算 | 整数・小数・分数の四則混合計算および□のある計算 |
②数の性質 | 約数、倍数、あまり、小数の性質、分数の性質 |
③和と差の文章題 | つるかめ算、分配算、平均算 |
④割合と比の文章題 | 割合の3用法、歩合・百分率、比、相当算、倍数算、仕事算、ニュートン算 |
⑤速さ | 速さの3用法、速さと比、旅人算、通過算、時計算、流水算 |
⑥平面図形 | 円とおうぎ形の複合図形、相似、面積比 |
⑦場合の数 | 並べ方、選び方 |
いかがでしょうか。これらをすべて網羅して学習するのはとても大変です。
時間が足りなくなり、睡眠時間を削ってしまう生徒も少なくありません。
しかしこれだけ多くのことを学習する小5だからこそ意識しておきたい、様々な単元にも共通する重要な考え方があります。
さらに、その考え方は中学受験にとどまらず、中学や高校でも、そして人生通して学習を続けていくのに必要な力となります。
今回はその考え方をお伝えしたいと思います。
小5の学習にとって大切な5つの考え方
中学受験算数で最も重要といわれる小5の学習において本当に重要なことは、以下の5つであると私は考えます。
①文章題は、文章を視覚化する図やグラフをていねいに書き、わからないもの、求めたいものを〇数字で表して、等式をたてる。
比を学習することによって、問題に例えば「AがBの3倍」とあれば、Aを③、Bを①とおいて等式を作ることができるようになります。
これは実は未知数をxで表して等式を作って解く方程式の考え方です。
小5でこの考え方を身に着けることができれば、将来、数学も好きになる可能性が高くなります。
②例題とそれに対応する基本問題を通して基本的な解き方・公式をていねいに理解する。
多くのテキストでは、例題と基本問題がセットになって載っています。ここが最も重要な問題です。
これらの問題をわかったフリをせず、なぜそのような考え方で解けるのかをていねいに理解することが最も重要です。
応用問題などは小6でも学習できますが、基本の習得は小5のうちにしかできません。
あとになればなるほど、一度わかったフリをしてしまったあとやはりわかっていなかったことを認めることは難しいのです。
③頻出題の出題パターンと基本的な解法をしっかり覚え、再現できるようにする。
問題を正解するために必要な解法を自分で思いつくことができる生徒はほぼ0人です。
ほとんどは、出題パターンとその解法を習い、覚えているのです。
覚えていないのに解けないのは当たり前です。自分の頭で考えることをしなくなってしまうのではないか?と心配する考え方もあります。
わからない問題を自分で一生懸命考えることも大切です。しかし、それは小4までです。
小5の学習量でそれをしてしまうと、時間がかかりすぎます。
小5のうちは問題を解く手順をしっかり覚えることが大切です。覚えたことを利用して考える練習を小6で行います。
④わからない問題は10分程度考えたらすぐ解答解説を見て学習し、先生に質問する。
③でも説明しましたが、解法を覚えていない問題を解くことはかなり難しく、時間もかかりすぎます。
10分考えてもわからない問題は解答を見て、その解答解説を完全に理解することの方に時間をかけるべきです。
また、わかったつもりでも何かもやもやしている場合は必ず先生に質問して、納得することが必要です。
解答解説をしっかり読む力と先生に気軽に質問する力はこそ、今後、中高さらに人生を通じて学習を続けていく上でとても大切な力です。
⑤一番大切なのは睡眠時間の確保
どんなに短くとも睡眠時間を8時間は確保してください。
小5から小6にかけて子供が成長するためには、絶対に睡眠が必要です。
最難関の開成や灘に合格する生徒の多くがよく寝ています。
10時には就寝するようにしましょう。そのために、何を省くことができるか、いかに計画をたてるかが大切です。
小5の保護者の方によく質問されることがあります。
特に多いのは「うちの子は基本問題はできるのですが、応用問題ができません。どうしたらよいでしょうか」という質問です。
これへの解答は実にシンプルです。 「本当に基本問題ができていますか?」ということです。
応用問題が解けない時は、解答解説をしっかり見て基本問題のどこが複雑になっているのかを比較できるかを確認してください。
基本問題の完全理解が何よりも大切です。
そして解答解説をしっかり読む習慣をつけてください。
できればその解答解説の内容を説明できるくらいにしておきましょう。わかったフリをしているかどうかは、それを説明できるかどうかでわかります。
わかったことを説明する力をつける講座があります。
私が担当している講座では、自分で正解する力よりもわからない問題を自分なりにどう考えたかを説明する力をつけることを目標にしています。ご興味があればぜひお問い合わせください。お待ちしています。
一緒に楽しく中学受験をがんばりましょう!
(文責:滝澤幹)
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著者プロフィール
タッキー先生(滝澤 幹 たきざわ かん)
中学受験算数ナビゲーター
御三家筑駒中学受験専門塾にて指導歴30年。「算数の楽しさは正解だけではない」「すべての小学生に算数の難問を解く楽しさを知ってほしい」と思い、math channnelに参加。算数表現力ゼミを主催。共著書に『親子で楽しむ!中学受験算数』(平凡社刊)がある。
■タッキー先生が執筆に携わったmath channelマガジンの本
ビジネスや生活から、エンタメや入試問題まで、中学生から読める、身近で、おもしろくて、役に立つ、数学の話をまとめた一冊です。
「算数・数学は面白いもの・楽しいもの」と思ってもらいたいという思いから、math channelマガジン編集部メンバーがアイデアを出し合いながら書きました。
ぜひ、お手にとってご覧ください!