こんにちは!math channelのしっしーです。
前回の記事では、「学びにクリエイティビティをどう取り入れるか」と題して、クリエイティブな活動にはどんなものがあるかについてお話してきました。具体的には、クリエイティブな活動は①主体的にモノを作る活動と②主体的にアタマを使う活動の2つに分けることができるということでしたね。
さて、クリエイティブな活動を「主体的にアウトプットする活動」と広く捉えると、活動を成功させるには子どもの主体性がとても大切であるということがわかります。
では、どうすればクリエイティブな活動に子どもたちを夢中させることができるのでしょうか?
言い換えれば、どうすれば子どもたちの「飽き」を防止することができるでしょうか?
特に年齢が低い子どもの場合、どうしても集中力に限界があるので、活動に飽きてしまうということはよく起こりますよね。
今回はクリエイティビティ編第3弾の記事ということで、この「クリエイティブな活動」の時間を持続させる方法について、一緒に考えていきましょう。
主体的にモノを作る活動の場合
今回も①主体的にモノを作る活動と②主体的にアタマを使う活動に分けて考えていきます。
活動の進度の違いに留意する
「主体的にモノを作る活動」の場合にまず頭の片隅に置いておく必要があるのは、子どもによって活動に取り組むペースに違いがあることです。
ある子はどんどん作っていくかもしれませんが、別の子はゆっくり1つのモノを完成させることにエネルギーを注ぐかもしれません。違う人間が集まる以上、活動の進度に違いが出るのは当然のことです。
そして、授業への意気込みやその日の疲れ具合など、様々な条件に左右されます。
教室などの環境で一斉にモノを作る際は特に、活動のペースに差が現れやすいと思います。
2パターンの「飽き」に対処する
このことを踏まえると、主体的にモノを作る活動の場合、「飽き」には以下の2パターンの可能性があると考えられます。
- やることがなくなって飽きてしまう可能性(特に、活動ペースが早い子ども)
- 思うように進まなくて飽きてしまう可能性(特に、活動ペースがゆっくりな子ども)
それぞれ、どのように対処すればいいでしょうか。
活動ペースが早い子には、新たな問題へのヒントを課す
まず、どんどんモノを作る子どもたちには、新たな創造・発想(クリエイティビティ)のためのヒントを出すことでクリエイティブな活動の時間を持続させることができます。
例えば、前回の記事で取り上げた「オリジナルの時計を作ってみよう」という活動を考えてみましょう。活動が進んでいる子どもには、以下のように問いかけることができます(実際に私が行った問いかけです)。
鉛筆だけじゃなくて、色鉛筆やテープを使ってもいいよ
立体的な時計を作るにはどうすればいいかな
これまでに習った色々な図形を使って、もっとオリジナルのデザインを作れるかな
「もっと面白いことができる」と活動の発展の可能性を示すことで、やることがなくなって飽きてしまうことを防止できますね。
活動ペースがゆっくりの子には、なぜあまり活動が進まないのかを分析する
活動がゆっくりな子どもに対しては、なぜ活動がゆっくりなのかをよく分析する必要があります。その上で、対応策を考えていきます。
例えば、デザインを悩むあまり、しばらく手が止まっている子どもに対しては、以下のような声かけをすることができます。
いくつ作ってもオッケーだよ。またやり直せるよ。
クリエイティブな活動には基本的に正解・間違いはないということを教えてあげることで、試行錯誤がしやすくなると思います。
同様に、アイデア自体が思いつかない子どもに対しては、教員がそばで見守りつつ、適度に声かけ・発想のヒントをあげることができます。
あるいは以下のように、活動が早い子どもを巻き込むのも一つの手だと思います。
○○さん、すごくいいアイデアだから、○○さんにも教えてあげて
一緒に作ってみたらもっと面白い作品ができるかもよ
また、道具を使う際の手先の器用さには個人差があるので、もしハサミなどを使うのが苦手な子どもの場合、大人が手助けすることでスムーズに活動が進行する場合もあります。
このように、活動が進まないために飽きることを防止するためには、なぜ活動がゆっくりなのか、子どもの様子をよく見て分析する必要があります。その上で、ある程度テンポよく活動を行うことができるようにサポートするのがいいでしょう。
主体的にアタマを使う活動の場合
子どもたち同士で考える
さて、今度は質問の工夫によって主体的にアタマを使う場合、どのように「飽き」を防止できるでしょうか。
この場合も、主体的にモノを作る活動の場合と同じように、子どもたち同士で考えさせることで飽きを防止することができます。
自分のアイデアを人に伝えることで考えを整理することができますし、アイデアが浮かばなかった子は、他の人のアイデアに触れることで考える上での「とっかかり」ができます。
ただし、性格上、発言する・意見を言うのが得意な子もいればそうでない子もいます。お互いに発言しやすい・お互いの意見を尊重するクラスの雰囲気作りを行うことも大切になりますね。
子どもたち同士で理解やアイデアの創造を助け合いながら、夢中で考える。こうしたクラス作りができれば、とてもいい活動ができると思います。
答えが1つに決まらない質問・問いかけをする
さらに、前回の記事でも述べましたが、答えが1つに決まらない“open-ended”な質問・問いかけは効果的だと思います。
例えば、線対称について主体的に考えさせる活動を考えてみましょう。
「○○は線対称の図形ですか」と質問すると、答えは「はい」「いいえ」の二つになります。
その代わりに、以下のように質問した場合はどうでしょうか。
今、目に見えるものの中から線対称の形を挙げてみよう
この質問に対しては、黒板、教科書、消しゴムなど、色々な答えが考えられます。答えが1つに決まらないので、何個も答えを考えることができますよね。子どもたちの飽きを防止しながら主体的に考えさせるために、こうした問いかけは有効だと思います。また、以下のように質問するのも手です。
「◯◯は線対称の図形かな?どうしてそう思う?」
一見すると「はい」「いいえ」で答えられる質問に見えますが、「どうしてそう思う?」と理由を尋ねています。色々な理由が考えられるため、答えが1つに決まらない質問となります。例えば黒板であれば、縦に線を引いて考えても、横に線を引いて考えても線対称な図形になりますよね。線の引き方(答え)は色々考えられます。
また、1つの質問だけを長い間考え続けることは集中力を要求します。色々な種類・角度からの質問を用意しておくことで、飽きを防止できます。子どもが詰まってしまった時にどのようなヒント(具体例を出す、イラストを描く、質問の仕方を変えるなど)を出すかを考えておくのもいいと思います。
クリエイティブな活動の目的に立ち返る
これまで3回に渡ってクリエイティブな学びについて一緒に考えてきました。いかがでしたでしょうか?
1回目の記事でお伝えしてきた通り、クリエイティブな活動を行う目的は、主体的に考え、新たなアイデアやモノを生み出すことにより、理解を深め、興味関心を育み、クリエイティビティを育成することです。
この目的に立ち返ると、大切なのは、1人1人の子どもたちの価値観や考えを尊重するというスタンスではないかと思います。活動のペースは様々ですし、子どもによって出てくるアイデアには色々なバリエーションがあります。(このことは教室はもちろん、兄弟・姉妹のいるご家庭にも当てはまりますね。)
多様性を育むことこそ、教育の1つの大きな目標なのかもしれませんね。ぜひ普段の教育活動のどこかに、クリエイティブな活動を取り入れてみてください。お読みいただきありがとうございました。