どうしたら「算数・数学好き」になる?/連載【「算数・数学が好き!」な子に育てるために、今、できること】Vol.03

こんにちは、math channel magazine編集部のしっしーです。

この連載の1回目でも取り上げた通り、2019年にmath channelが行った「算数・数学に対する意識調査」というアンケートでは、「算数・数学が好き」になった時期は60%が中学入学以前「算数・数学が嫌い」になった時期は70%以上が中学入学以降という結果になりました。

つまり、中学入学以前から「算数・数学好き」になることができれば、中学校以降で発展的な数学を学ぶ際、より楽しむことができたり、学びへの心の準備ができることにつながるかもしれません。

では、そもそも「算数や数学が好き」な人はいったいどのようなことが好きなのでしょう?
また、周りの大人は、どうしたら子どもを「算数・数学好き」に育てられるのでしょう?

皆さんは考えたことはありますか?

プロセスが楽しい!

これを考える上でまず取り上げたいのは、算数・数学が好きな人は、どうして算数や数学を好きになったのか、ということです。

これについてmath channel magazineの編集部メンバーで話し合ったところ、ある一つの共通見解がありました。

それは、「解くという過程(プロセス)自体が楽しい」と感じる人は、算数や数学が好きになるのではないか、ということです。

ではこの「プロセスが楽しい」というのはどういうことなのか、一緒に考察してみましょう。

一番分かりやすいのは私たちによく馴染みのある「ゲーム」です。

ゲームの楽しさは、どこにある?

例えばRPGゲームをやっている時、強いモンスターを育成することや、ゲームをクリアすることがプレーヤー達の目標です。

でも、そうした結果を得ることだけが果たしてゲームの楽しさなのでしょうか?
そんなことはないですよね。
モンスターを育成する過程や、ゲームの中で冒険する体験が楽しくて、ついついゲームに手が伸びてしまうはずです。

また、最近YouTubeでは「ゲーム実況」が人気です。
これは、配信者がゲームをしている様子が実況される、というものなのですが、ゲームクリアを達成することだけが目的なら、そもそも自分自身でプレーしていない実況動画を見てもつまらないはずですよね。

ゲーム実況が人気なのは、ゲームをしている過程を見ることがわくわくするからではないでしょうか。

話を学習に戻すと、勉強もゲームと似ているところがあります。

例えば小学生の頃、理科や算数、音楽や体育など様々な科目を学習する中で、「学ぶことって楽しいな」と感じた経験がないでしょうか。
「知的好奇心」という言葉がある通り、新しいことを知ったり、できるようになる過程は元々楽しいはずなんです。

予備校の現代文講師として有名な出口汪先生も、勉強は遊びの一貫であり、物事を記憶するためにもその学びを楽しむことが大切だと指摘しています(『出口汪の「最強!」の記憶術』)。

算数・数学で言えば、「問題を解くこと」「理解すること」がゲームクリアだとしたら、「それに至るまでの思考の過程」がゲームの冒険であり、新しいことができるようになる「わくわくする時間」です。

難しい計算問題を解いたり、徐々に算数・数学の考えが理解する中で、その過程すら「楽しい」と思える。
そして、最後に「解けた!」という達成感を感じる。

こういったことが、「算数・数学好き」な子ども達の中で起こっていることの一つなのかもしれませんね。

では、そんな「算数・数学好き」な子を育てるために、周りの大人である私たちはどうすれば良いのでしょうか

ここで2つ紹介したいと思います。

結果ばかりに注目しない

まず一つに、「結果ばかりに注目しない」ということがあります。

私たちはつい、子どもが難しい計算問題が解けた時に、「難しい問題ができてえらいね」と言ってしまいがちです。
しかし、「解ける・解けない」という結果ばかりに注目してしまうと、本来の「学ぶこと自体(過程)が楽しい」という感覚に目を向けづらくなったり、「結果を出さないとダメだ(解けないとダメだ)」という全く別のメッセージを発信することになるかもしれません。

難しい問題を解けたとき、何と声をかける?

カウンセラーの大野萌子さんは、自身の著書『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 言いかえ図鑑』の中で、子どもに対して「100点満点を取ったことがえらい」という褒め方をしてしまうと、子どもは逆に「そうでなければえらくない」と受け取ってしまい、親の評価に左右されるようになる可能性がある、という危険性を紹介しています。

一緒に算数を楽しもう

もう一つの観点として、私たち大人が算数を一緒に楽しむ姿勢を見せることで、子どもの算数への興味を引き出すきっかけになる可能性があります。

子どもの頃、親と一緒に何かをやった経験は、大きくなってからも記憶に残っていますよね。
『学ぶ意欲の心理学』の中でも、家庭の中で親自身が教養番組やニュース番組を見たり、読書をするなど、学習の楽しさを示す行動を見せることが、子どもの学習への関心を高めることにつながるということが紹介されています。

お金の計算、時刻表など、私たちの日常は数字に溢れています
ちょっとした足し算や引き算の計算も、子どもと一緒にすればクイズ大会になりますね。
あるいは、久しぶりにお子さんと方程式を解いてみるのも面白いかもしれません。
もし親御さんが算数・数学を得意じゃないとしても、一緒に算数・数学を楽しむ姿勢を見せることで、お子さんの捉え方も変わってくるかもしれません。

親子で一緒に算数を楽しんでみよう!

math channel magazineで毎週水曜日に公開している「算数クイズ」は、大人も一緒に算数を楽しめる絶好の素材です。ぜひ、ご活用ください。

今回は、「算数や数学が好き」な人はなぜ好きなのか、また親としてどうしたら「算数・数学好き」な子どもに育てられるのかについて、考えてみました。
その中で、「結果ばかりに注目しない」ということを紹介しましたが、それでは、どのように声をかけたらいいのか?迷ってしまいますよね。
次回は、算数・数学をやっている子どもに対する具体的な言葉かけについて、ご紹介します。

参考文献 

  • 出口汪の「最強!」の記憶術(出口汪著、水王舎) 
  • よけいなひと言を好かれるセリフに変える 言いかえ図鑑(大野萌子著、サンマーク出版)
  • 学ぶ意欲の心理学(市川伸一著、PHP新書)

(文責:しっしー)

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この記事を書いた人

学習塾、中学校、高等学校などで英語指導の経験あり。教育心理学、CLIL(内容言語統合型学習)・教科横断型学習などに関心があります。 math channelの提供する「楽しい」×「算数」という新しい教育の形に惹かれてメンバーに。これまで算数のコンテンツ制作やアフタースクール講師を担当。math channel magazineでは、ライターとして、教育に携わる方々に少しでも役立つコラムを執筆するために奮闘中。好きなかけ算九九は「4×4=16」。