我が子に算数できるようになってもらいたい!と考えるパパママに向けて、
ドリルをしよう!とか教室に通わせよう!などという話ではなく、
日常生活の中でしれっと自然に算数センスを身につける方法をお伝えするシリーズ第12弾。
今回はいつもの単元別の話ではなく……
こちらの記事の続きで、「算数を教えるときのコツその2」についてお伝え出来たらと思います!
前回は「基本は、算数は、教えない!」という話でした。それでも子どもが「これ教えてほしいんだけど……」と困っていたら……さあ、パパママはどうしましょう??というお話です。
よろしくお付き合いくださいませ!!
「傾聴」って、知ってる?
突然ですが、皆さんは「傾聴」と言う言葉を聞いたことがありますか?
傾聴というのは、
相手の話したいことに対して深く丁寧に耳を傾け、相手に肯定的な関心を寄せ内容の真意をはっきりとさせながら、共感的理解を示すコミュニケーションの技法
https://www.ashita-team.com/jinji-online/business/9335
だそうです。
初めて傾聴の「講座」があるよと聞いたときには「聞く」をわざわざ「学ぶ」の??と驚いたのですが、言われてみれば確かに「聞く」って難しいんですよね。
聞いているようで、自分の都合の良いように解釈してしまったり、聞いているようで、そのあいだ次の自分のターンにどう返したらいいか考えてしまったり。
特に自分の子どもに対してだとね~。詳しくは言いませんけど……ねえ?ですよねえ?(笑)毎回ぜーんぶちゃーんと聞いてたら夕飯ができあがりませんよ。と。そういう話ですよ。ええ(笑)
で!
なぜ突然、傾聴の話をはじめたのかと言えば……
教えるときのコツその2が、ずばり!
子ども(教わる側の人)に聞いてみること
だからです。
「教えない」の次は「聞く」だなんて、全くホントにこれのどこが「教えるコツ」やねんと思われるかもしれませんが、いやいや、「聞く」「質問する」ってすごい有効なんですよ。
「教えられている内容を聞く」ターンは、ぶっちゃけその人がサボって適当に頷いていても誰もわからないのに対して、「自分の考えを話す」ターンはサボれません。
つまり、「話す」という行為は強制的に頭を働かせることができるのです。
だから、「話す」のは教わる側の人の方にしてもらって、教える側は「聞く」方がいい!
なんだかこんな風に言うと、もしかして教える側はサボっていいってこと?と誤解されるかもしれませんが、ご期待に沿えずすみません!そんなことはないです!(笑)
むしろこちらも頭フル回転で真剣に聞くんです。
それが、「算数を教えるときのコツその2」です!!
さあ、では一体何をどんな風に聞いたらいいのか、具体的にお話していきましょう!
聞いたらいいことその1 「どんな問題?」
例えば、子どもが
ねぇ、これわかんない!
と、宿題を持ってきたとしましょう。ここですぐ、「聞く」ターンがやってきます。
どれどれ~?と問題を読むのではなく、
おう、そうなん?どんな問題?
と、尋ねてみてください。
例えば……
ママ、これわかんなーい!
ほう。どういう問題?
なんかここに書いていく問題
ここって?
表(ひょう)
何についてまとめた表?
……1本の長さの変わり方?
えー?(笑)ちょっとわかんない(笑)
問題読んでみて?
「240㎝のテープを切り分けて、同じ長さのテープを何本か作ります。」
あー、そういう問題かあ。
こんな感じ。子どもがどんな問題かうまく説明できない時は、「問題読んでみて」が便利です。
そして、おそらくここで1つ目の分かれ道がやってきます。問題の意味をわかっているパターンと、わかっていないパターンです。
問題の意味がわかっている場合は、そのまま突き進みましょう。けれども、問題の意味がわかってなくて「どうすれば??」と混乱しているケースはけっこう多いものです。
その辺を見極めるために、どんなふうに問題を捉えているのか、ガンガン聞いてみて下さい。
テープを切っちゃうんだね?
そう
もともと何cmなん?
240㎝
いくつに切るん?
しらない。てかいろいろ変わるんよ
そうなん?
ここに書いてあるじゃん!
1本とか、2本とか、3本とか。切って、そんときの長さをここに書くの!
あー、じゃあ、1本に分けたときの長さをここに書いて、2本に分けたときの長さをここに書けばいいのね?
あ!(わかった!)
子ども自身が勘違いをしていたり、いまいちはっきりとした想像ができてなかっただけの場合は、この時点で「あ」と言いながら去っていくことが多いです。もうひとつ例をあげると……
これどう計算したらいいん?
どんな問題?
ジュース3本とお茶を4本買って、代金はいくらですかって問題。
ジュースのねだんは分からないの?
わかんない
お茶は?
わかんない
えー?それじゃあわかんなくない?他になにか情報ないの?
120円って書いてある
何が120円なん?
「どちらも1本120円のとき」って書いてあるから……ああ、なんだ、そゆことね!
「教えてー!」ってやってきたのに、どんな問題なのかしゃべって勝手に解決して去っていくので、こっちとしては「なんやねん」と思う(笑)んですが、これが、聞くことの効果です。
私たち大人も、友達に相談にのってもらって「うんうん」と聞いてもらっていたら、話している間に整理されて解決してくことってありますよね!
そんな感じです。
問題文の意味を補足する
もちろんほんとに問題の意味がわからないこともあります。
そんな時は、言葉の意味や問題文の意味する状況を教えてあげて下さい。
この問題わかんない
どんな問題?
よくわかんない
問題読んでみてよ
ジュース3本とお茶4本を買います。どちらも1本120円のとき、代金は何円になりますか
買い物の問題なのね。何買うんだって?
ジュースとお茶
どんくらい?
ジュース3本と、お茶4本。
ふむふむ。で、何を求めるんだっけ?
代金はいくらか
ってことはあと何が知りたいん?
えー?ジュースの代金とお茶の代金がわかったら足せばいいけど書いてないもん。
ていうか7本あるのに「どちらも1本120円」ってどういうこと??
あー、「どちらも」ってことは「何かと何かが両方」120円ってことよな。
さっきお姉さんジュースとお茶って言うてましたやん
ああ!ジュースもお茶も120円ってこと?
じゃあわかった!
よかったね~。
この時、「ねぇねぇわかんない」というざっくりとした質問だったのが、聞いているうちに「どちらも1本120円ってどういうこと?」のように、「○○の意味がわからないから、教えて欲しい」だとか「これってどういうこと?」という具体的な質問に変わっていることが大事です。
そうした、何がわからないのかを掘り下げたいときは具体例を聞いてみるのもいいですよ。1つ例をあげると……
ねー、9でわっても12でわってもわりきれる整数ってどう求めるの?
9でわるとか12でわるってことは、なんか数があって、それを9や12でわるってことよね
うん。
そのわられる数を9でわると、わりきれるってことよね。
例えばどんな数?
18とか?
他には?
27とか36とか
他には?
90とか?
確かに全部9でわりきれる数やね。
で、今求めたいのは同時にそれを12でわってもわりきれるものってことよね。
90を12でわったら……
7だと84だし、8だと96だし……ざんねーん、わりきれないね。
18は12でわりきれる?
むり。
27は?
だめ。
だめかー。
でも、どんな数を求めたらいいかはわかったんじゃない?
だね。やってみる!
こんな感じ。
問題の意味がわかりさえすれば、実は算数の部分はわかっているというケースもたくさんあります。
で、この場合は問題の意味を教えてあげた後に「○○って意味がわからなかっただけだね」とか、「ちょっと問題でいってることがつかみにくかっただけだね」などと言って上げると2つ良いことがあります。
1つは、「わからなかった」「ダメだ」と言う印象が減って、「あーここで引っかかってただけなのか。じゃぁ問題を解いてみよう!」と前向きになれること。
2つ目は、こちらが言い直すことによって、質問の形を身に付けられること。ただ「わかんない」じゃなくて、だんだんと何がわからないのかを考える癖がつけば、それだけでできるようになることも多いですし、質問もとっても上手になります。
聞いたらいいことその2 「どう考えたの?」
さて、どんな問題なのかを聞いてみた結果、問題の意味はわかっているけど、どう解いたらいいかわからない状況だということが確認できたとしましょう。そんな時はどうしたらいいのでしょうか?
まずはやっぱり聞いてみることです。
ざっくり、「どう考えたの?」と聞いてみましょう!
ふむふむ。この形の面積を求めるのね?
どう考えたん?
とりあえず、こんな変な形の面積求められないから~
長方形2つに分けたのね
お~ナイスアイデア!
で、こっちは求められたのよ。
縦が5㎝で横が3㎝だから15㎠
うんうん
だけどこっちの長方形がわかんない
縦の長さはわかりそうだけどな
え?あ~、わかるか。5+3で8cmだ。
で、あとは横の長さを知りたいんだけど……
ん?ちょっとまってわかるかも。
こっからひけばいいんだ!なんだ!わかった!もういいや!
はいはーい。
とまあ、この場合も、これをああして、こうしてと話しているうちに、「あ」とか言い始めて去っていくことが多々あります(笑)先程の問題が把握できていないようで聞いてたら自己解決したパターンと一緒ですね。
話している間に考えがクリアになったり、うんうんと頷いて聞いているだけで自分の考えに自信がもてたりするのでしょう。もう放っておいてオッケー!
間違いの指摘はマイルドに
もちろん「あ!」とはならないこともあります。
もし、聞いた考えの中に間違いがあった場合はそれを指摘してあげて下さい。例えば、
ここが5㎝でここが10㎝だから面積は5×10で50㎠だと思うんだけど~(答え違った)
縦×横しようと思ったんだ?
うん。
でもさ、縦×横って長方形の面積求める場合だよね?これ長方形じゃなくない?
あーそうじゃん。
こんな感じです。コツは、「あーそれ違う違う!」みたいな言い方をするのではなく、「ちょっとおかしくない?」とか「こうなんじゃない?」とか、パパ(ママ)はこう捉えたんだけどどうかな?みたいなスタンスでいくことです。
人間は否定されたら嫌になる生き物ですからね。
聞いたらいいことその3
「何を求める?」「何が知りたい?」「ってことは何がわかる?」
子どもが自分の考えを上手く説明できなさそうな時は、「何を求める?」「何が知りたい?」「ってことは何がわかる?」といった質問が便利です!
これどうしたらいいのー?
何の問題よ?
本の問題
なんか本が出てくるん?
全部で500ページの本
分厚いね(笑)で?
25%を読み終わったんだけど~、「残っているのは何ページですか」だって
今わかっていることは?
本が500ページで、読んだのは25%で…
25%って、なんの25%?
500ページの25%
ほうほう。で?他にわかっているのは?
ない
じゃあ、何が知りたい?
残りのページ
そりゃね(笑)他に、これがわかれば残りのページがわかるのに~ってものはないん?
そりゃ、読んだページでしょ
読んだページはわからんの?
読んだページは…25%か
何の25%?
500ページの25%だ!わかった!
これ、聞いてる大人の方は何も解法を伝えてないことに気がつきましたか?
教えてあげなくても、「何を求めたい?」「そのために何が知りたい?」「ところでどんなことならわかる?」だけで子どもが勝手に解いてしまうこともあるんです。
是非、試してみて下さい!
そして、めっちゃ「素直に」聞く!!
ところで、子どもの解法や考えを聞いている際に絶対に気を付けてほしいことがあります。
それは、
自分の解法を持ち込まない
ということです。
もうこの辺はまさに「傾聴」な話です。子どもが考えたことをじっくり聞いてあげてください。
とはいえ、これが意外に難しいんですよ。例えば、こちらは先日の我が家で実際事故になりかけた案件ですが……
70㎞の55%を出したいんだけど、どうしたらいいんだっけ?
なんか図はかける?
(図をかきながら)全体1が70㎞で、そのうち0.55を出したくて……
いいじゃん
ああ、だから0.01を出したらいいのか。0.01は0.7㎞でしょ。
割合に慣れている人は70㎞の55%を70×0.55で求めるかもしれませんが、彼は0.55倍という小数倍がまだピンとこないため、1が70㎞であることから、いちど0.01が0.7㎞であることを求めて、そこから55倍しようとしているようです。ところが!
0.7㎞×100をしてみると……
なんと55倍じゃない! 100倍したらさっき100で割ったのが元に戻るだけなのでは? 大丈夫?
思わず「え?」といいかけましたが、土壇場で飲み込みました。そしたら……
70㎞だよね。よし、0.01は0.7㎞だ。
なんと、70÷100の答えを確かめてただけでした(笑)
ここでもし私が「え?」って言ってたら、彼の思考が中断するし、否定されて不安になるしで解けなかったかもしれません。
教えてあげよう! こうやるんだぜ! という気持ちが強いと、子どもがやっていること言っていることについつい違和感を覚えて「そうじゃなくてね。」と割り込んでしまうんですよね。
でも「教えてあげよう!」ではなくて「考えていることを理解しよう!」というスタンスでいてもらいたいのです。
そうするとまず、目の前の人が味方だとわかるので、安心して問題に取り組むことができます。
そして、自分が着目したことや自分が考えたことをベースに話が進むので、理解しやすくなります。
実際にちゃんと聞いてみたら、大人の考えや教科書の解法と違うだけで、あっていることもあるんですよ。
例えば、「5個入りのあめが3ふくろあります。あめは全部でいくつですか?」という問題があったら、大人は5×3=15(個)ってだしますよね。対して、子どもは「えっと……5+……」と言いはじめたりします。「あ~!たすじゃなくて……!」と言いたくなりませんか? ところが、その続きは「5+5+5だから15!」これはもちろん、あっていますよね。
あっているのに、途中で違うよ!って言われたら、それはやっぱり算数を嫌いになってしまいかねません。
だから、頑張って人の話は最後まで聞きましょう。ああ、なんだか当たり前のことを言ってしまいました(笑)でも、難しいのでお互い心にとめておきましょう。ね!
ちなみに私は、学校で教わってきた解法でなくても問題が解ければそれでいいことにしてしまいます。
先生によってはそれでは×になってしまうというときは、お子さんの解法にハナマルした上で、こういう考え方もあるみたいだね。と伝えてあげてください。
(でもそれって場合によっては結構ハードなことで、混乱するようならやめておいた方が良いのではと思ってしまいます)
あとは、一緒に考えるか、先生に任せるか。
さあ、ここまできて残ってるケースはおそらく、「問題はきちんとつかめているが、いろいろ考えてみたところ、誤ったことをしているわけではないけれども先に進むことができず、答えが出ない」というケースだと思います。
もしくは、「5の倍数を小さい順に3つかきましょう」という問題に対して「倍数ってなあに?」という状態であるとかですかね。
その場合は、もしパパママがわかるのであれば一緒に考えてあげてもいいと思います。「ってことはこうなるか!」みたいに少しヒントが出せれば、解けるかもしれません。
もしくは無理に教えなくても、学校の先生や塾の先生に聞いておいでと言うだけで、しっかり的を得た質問ができるんじゃないかなぁと思います。もう何が分からないのかはハッキリしているでしょうから、説明もすっとはいっていくと思います!
教えてって言われたら、「傾聴」というキーワードを思い出そう!
これまで話してきたことをフローチャートにまとめるとこんな感じです。
フローチャートって何よ。という方はこんな記事があるのでぜひご覧ください!
今回は思ったより具体的なお話になってしまいましたが、「聞く」が有効だということを覚えていただけたら嬉しいです。
お子さんに「教えて」って言われたら、是非、やり方を伝えるような教え方ではなく、どんな考えをしているのか理解ながら一緒に考えていくという方向に意識を持っていってもらったら、算数をしっかり楽しめるかと思います。ちょっと遠回りかもしれませんが、おすすめです!
以上、今回は「子どもに算数を教えるときのコツその2」についてでした。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
次回はまた単元の話に戻って、日常でできる算数体験についてお話しする予定です。
お楽しみに!
それでは!