こんにちは、math channel magazine編集部のしっしーです。
これまでの記事では、算数・数学が好きな人の好きな理由は何なのか、また算数・数学好きの子どもを育てるには周りの大人はどうすれば良いかについて考えてみました。
そして、前回の記事の中で、「結果ばかりに注目しない」ということがありました。
それでは、具体的にはどのような声掛けをすれば良いのでしょうか。
今回は、子どもと対話をすることと、子どもの目線に立つことの大切さについて、考えてみましょう。
子どもと対話する
まず、声掛けをする前段階として、子どもの話に耳を貸す姿勢が大切です。
このことについて、以下の例から考えてみましょう。
算数のテストでよく100点満点を取っている子が、ある日70点を取りました。
すると、お母さん・お父さんに見せたら、がっかりされてしまいました。
これは、漫画や小説でよく出てきそうな状況ですね。
この場合、点数という「結果」は、確かに30点も下がってしまっています。親御さん(あるいは先生)からすると、残念に思ってしまいますよね。
でも、その背後にある原因は何なのでしょう? なぜ点数が下がってしまったのでしょうか?
- もしかすると、算数の分野によって得意・不得意があるのかも?
- いや、新しいことを学んでいるうちに、前に習ったことを忘れてしまった可能性も。
- 他の科目を頑張ったから、算数がおろそかになってしまったのかも。
- たまたま別のことに熱中してしまっていたので、今回はあまり勉強しなかったのかも……。
このように、様々な原因が考えられます。
同じ「30点下がった」という状況でも、その原因によって声かけやアドバイスの仕方は変わりそうですね。
そして、「何が原因か」という答えは、子どもだけが知っているのです。だからこそ、子どもと対話してみる、子どもの言葉に耳を傾けることが、声かけの第一歩ではないでしょうか。
その上で、理由によっては、結果ばかりに注目せず時には暖かい目で見守ることも大切な場合もあるかもしれません。
教育は長期的な取り組みです。一時的に点数が下がってしまっても、まだ学習の過程(プロセス)の途中なのです。
シーン別、算数学習をしている子どもへの声掛け
子どもの言うことにしっかり耳を傾けた後、どのような言葉掛けをすれば良いのでしょうか?
算数の学習をしているシーン別に、具体的に考えていきましょう。
問題をクリアしたときの声掛け
まずは、「問題をクリアできたとき」の声掛けについて、考えてみましょう。
声掛け①「えらいえらい、賢いぞ」
子どもにとって、褒められたことは確かに嬉しいでしょう。
しかし、これは以前の記事で紹介したように「できる/できない」という結果に注目している言葉です。
また、少し上から目線の言い方にもなっています。
声掛け②「なるほど、そうやって解けばいいんだね」
これは、子どもと対等な関係になっている言葉です。
その中で、学ぶこと自体の楽しさを引き出すことにつながるのではないでしょうか。
子どもが試行錯誤しているときの声掛け
続いて、子どもが一生懸命に試行錯誤しているときの声掛けを考えます。
声掛け① 「それじゃ多分うまくいかないよ、貸してごらん」
「違うんじゃないかな?」「まだまだだね、勉強が足りないよ」など、つい言ってしまいたくなることがありますよね。
大人は長く生きている分、子どもよりも知識があるので仕方がないのですが、このような言葉をかけられると、子どもは試行錯誤そのものに対して後ろ向きに捉えてしまう可能性があります。
声掛け②「あとちょっとだね」
試行錯誤しながら考えるのは学びにおける大切なプロセスです。そんな時は、「良い感じだね」「あとちょっとだね!」など、前向きに学習に取り組める言葉を選ぶのが良いでしょう。
大切なのは、子どもの目線に立つこと
それぞれのシーンで、②の声かけの仕方に共通していることはなんでしょうか?
それは、子どもの目線に立つことです。
私たち大人と子どもたちとでは、見ている世界が異なります。
物理的な目線の高さはずいぶん違いますし、考え方や思考は子どもの方が柔軟なことがよくあります。
必ずしも大人が優れている・・・ということはないわけです。
そして、子ども達の学びの過程は多様です。
一人一人の子どもの目線に立つことで、適切な声掛けができると考えます。
もちろん、「えらい、よくできた!」などの大人目線の声掛けも、子どもの性格や状況によっては良い結果を生むこともあるかもしれません。
しかし、子どもの目線に立った声掛けを心がけると、学びへの楽しさを自分で見つけるための一歩になるはずです。
そして、子どもの目線に立つということは、うわべの言葉だけではなく、本心が伴う必要があります。
子どもと一緒に感動を共有しながら、「そうか、そうやって解けば良いんだね!」など、心の底から出た声掛けをすることが理想的かもしれませんね。
会話のキャッチボールを楽しむ
また、私は小学生を対象にしたmath channelの体験型算数教室を担当することがありますが、お子さんによっては、大人(親や先生)と会話をすることが何より嬉しいということもあります。
作品を作っている時、「先生、これなんだかわかる?」と尋ねられたら、「え〜、わからないな、ヒントは?」など会話のキャッチボールを楽しむことで、いっそうワークにやる気を出してくれることもあります。
今回の記事では、算数・数学好きの子どもを育てるために、子どもと対話することや、子どもの目線に立った声掛けを行うことの大切さについて考えてみました。
まずは、「今日の算数(数学)の授業では何をやったの?」と聞いてみることから始めるのも良いかもしれませんね。
(文責:しっしー)