記述問題は、答えが1つじゃないから楽しい!/連載タキザワ流、合格力がつく!中学受験算数ガイド【Vol.07】

こんにちは。中学受験算数ナビゲーターの滝澤です。

今回は記述問題をとりあげます。

私が担当している講座「算数表現力ゼミ」の話

私はmath channelで「算数表現力ゼミ」という講座を担当しています。
こちらの講座では、たとえば計算をどのように工夫すれば簡単に解くことができるかを説明したり、四角形の種類についてたとえば平行四辺形の特徴を説明するなど、問題を解くうえでふだん頭の中だけで何となくやってしまいがちになることを言葉にして書くことによって明確に理解できるようにしようという講座です。

実際の入試問題では、「~なのはなぜですか?」という理由説明を求められる出題が最近では多くなってきました。
栄東中学では、「分数÷分数の計算をするときに、÷の後ろの分数の分母と分子を逆にしてかけると答えが出るのはなぜか」という問題が出題されたこともあります。

今回は、早稲田実業 2022年大問2(2)から、この問題をご紹介しましょう。

問題です。/早稲田実業 2022年大問2(2)

ある算数の問題を、A君は次のように解きました。

(問) 5時から6時の間で、時計の長針と短針のつくる角が直角になるのは2回あります。1回目は5時何分ですか

(式) $60×\frac{2}{11}=10\frac{10}{11}$

(答) $5時\frac{10}{11}分$

時計算を復習しましょう。

こちらは時計算の問題です。

この連載の3回目「設問の前に考えよう!」では、桜蔭中学のちょっと変わった時計についての時計算の問題を扱いました。実は桜蔭中学では2022年も時計についての問題が出されました。

時計という題材はあらゆる中学で本当によく扱われます。時計は身近にある算数の代表のひとつなんですね。

さて、今回の問題で扱う時計は、普通の時計です。ここで時計算の一般的な考え方をもう一度復習しておきましょう。

時計であれば、短針と長針があります。
長針は60分で1周、短針は12時間=720分で1周しますね。
つまり長針は1分間に6°、短針は1分間に0.5°動くわけです。

ということは、短針と長針がつくる角度は1分間に5.5°ずつ縮まり、ぴったり重なり、重なったあとまた5.5°ずつ広がり、一直線になり、また5.5°ずつ縮まるということをくりかえすわけですね。


これを利用して、短針と長針が重なる時刻ある角度になる時刻、または、ある時刻における短針と長針のなす角度を求めたりするのが、時計算の基本的な問題です。塾などでは小5の秋から冬に学習すると思われます。

解答解説

では早稲田実業の問題を考えていきましょう。

(問) 5時から6時の間で、時計の長針と短針のつくる角が直角になるのは2回あります。1回目は5時何分ですか

この問題自体は基本問題といってもよいでしょう。まず5時ちょうどを考えます。

長針と短針のつくる角は150°ですね。ここから1分ごとに5.5°ずつ縮まっていくわけです。

長針と短針のつくる角が直角すなわち90°になるためには、

150-90=60°縮まればよいことがわかります。

よって、60÷5.5の計算をすれば5時何分かが求められるわけです。

答えを求める問題ではない。

しかし今回の問題では、答えが5時10$\frac{10}{11}$分であることはわかっています。

そうではなく、A君がたてた式を説明しなさいという問題なわけですね。

A君のたてた(式)の中の「60」と「×$\frac{2}{11}$」がそれぞれ何を意味しているのかがわかるように(式)の説明をしなさい。

とありますから、この指示に従って解答しなければなりません。

「60」について。5時ちょうどには長針と短針のつくる角が150°でこれが90°になるためには、150-90=「60」°が縮まるべき角度となる。

「×$\frac{2}{11}$」について。1分間に進む長針と短針の角度がそれぞれ6°と0.5°であるから、1分間に長針と短針のつくる角が6-0.5=$\frac{11}{2}$°ずつ縮まっていくことになる。よって、1°縮まるためには、

よって60°縮まるためには、この60倍の時間がかかるから、

60×$\frac{2}{11}$=10$\frac{10}{11}$という式になる。

このような解答になるでしょうか。なお、

60÷$\frac{11}{2}$=60×$\frac{2}{11}$

としても大丈夫であると思われます。

さらにこういう考え方もできるでしょう。

60分で長針は360°、短針は30°動くから、長針は短針より330°多く進む。

5時ちょうどから長針と短針がつくる角が直角になるまでには、150°から60°縮めればよい。よって長針が短針よりも60°多く進んだ時間を求めればよい。これは「60」分の$\frac{60}{330}$すなわち「$\frac{2}{11}$」であるから

60×$\frac{2}{11}$  という式で求められる。

こちらの方が、シンプルで、「×$\frac{2}{11}$」をよりわかりやすく説明できているかと思います。

記述問題を解く楽しさ

算数の問題はたいてい、答えは1つです。しかし、記述問題は答えが1つではありません。だからこそ難しく、そして面白いともいえますね。

算数の面白さのひとつに、「視点を変える」ことがあります。
ものの見方、考え方を少し違う角度から考えてみると、新たな発見があって面白いものです。

「あたりまえ」だと思っていることをあえて「なぜなんだろう?説明してみよう!」という風に考えながら勉強してみると視点が変わってさらに楽しくなってくると思います。

次回は、素数に関する問題

さて、次回はシンプルだけど頭を使う素数と平均についての問題です。南山中学女子部2022年大問4(11)です。

異なる5つの素数について考えます。5つの素数の平均は18、ある3つの素数の平均が15であるとき、5つの素数の中で最も大きいものを答えなさい。

素数についてのいろいろなお話もできるといいなと思っています。お楽しみに。

■ちょっと変わった時計算の問題もどうぞ!

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この記事を書いた人

御三家筑駒中学受験専門塾にて指導歴30年。「算数の楽しさは正解だけではない」「すべての小学生に算数の難問を解く楽しさを知ってほしい」と思い、math channnelに参加。算数表現力ゼミを主催。