算数に出てくる「おもしろい名前」~親しみやすい印象的な名前を算数の特徴とともに紹介!~

こんにちは、みうらです。

今回は、「算数の中の“おもしろい名前”たち」という、ちょっとユニークなテーマでお話しします。
難しい計算や証明は一切登場しません!
むしろ、「へえ、そんな覚え方があるんだ」「聞いたことあるかも」といった、気軽に楽しめる話ばかりです。
それでは、まずは有名な“あの名前”からスタートしましょう。

「きはじ」から

「きはじ」、覚えていますか?

「き」は距離、「は」は速さ、「じ」は時間。小学校5年生で習うこの公式は、この図に当てはめて覚えると便利です。「はじき」や「みはじ」といった呼び方もありますが、どれも三つの量の関係を整理するための工夫です。

この“きはじ型”の構造は、実は理科でも登場します。たとえば、「電圧=電流×抵抗」というオームの法則も、同じような図で整理できます。ほかにも「金額=単価×数量」や「面積=縦×横」などがあります。

この図を使うと、「どの量が掛け算か」「どれを割るのか」が一目でわかり、理解や記憶にとても役立ちます。

皆さんもこの「きはじ」で表わされる関係をいろいろと探してみてください。

ちなみに筆者は、大人になってから「きはじ」に出会いました。子どもの頃、オームの法則をこの図で覚えていたため、再会したときはどこか懐かしさを感じました。

図形編

さて、ここからは図形に登場する「おもしろい名前」たちです。

スリッパの法則

三角形の外角は、その隣り合う内角2つの和と等しくなります(いわゆる外角の定理)。
この図が、ちょうどスリッパの形に見えるのです。

スリッパの法則を使って星形のとげの部分の角度の和を求めてみました。スリッパを2回使えばいいです。

ブーメランの法則

四角形の一部が凹んだ「ブーメラン型」の図形で、凹んだ角の大きさは、隣接する2つの内角の和に等しいという性質があります。スリッパの法則を2回使えば、成り立つことが分かります。

こちらもそれなりに使えます。

先ほどの星形のとげの部分の角度の和にも、ブーメランの法則を使うことができます。

砂時計型・リボン型・ちょうちょう型

左右に相似な三角形がつながってできる図形。


ピラミッド型

底辺の長さを比較しているときに現れるピラミッド型の三角形の相似図形。

いずれも図形の相似関係を見抜くための“見た目のしるし”として、とても重宝します。

狐の顔

三角形の中を横切る直線の交点や辺がちょうど狐の顔のように見えることから名づけられた図形です。

これは、以前3回にわたって取り上げた「メネラウスの定理」の図です。

名前だけ聞くと少し構えてしまう定理ですが、この図を見て「狐の顔みたいだな」と思えば、覚えやすいですよね。

その他の楽しい俗称たち

和差算や植木算など、「○○算」という名前には、問題のイメージや解き方がすっと浮かぶような工夫が込められています。

そうした“わかりやすさ”を一歩超えて、まるで昔話のような響きをもつ「油分け算」や「衣盗人算(きぬぬすびとざん)」、「盗人隠し」といった名前も登場します。「どんな問題なんだろう?」と想像をかき立てられ、思わず調べてみたくなる──そんなインパクトを持っていますね。是非調べてみてください。

「油分け算」はこちらの記事をご覧ください。

まとめ

今回ご紹介した「おもしろい名前」の多くは、数学者が公式に名づけたものというより、先生や教材の工夫から生まれた親しみやすい表現です。

名前ひとつで、理解の入り口がぐっと近くなるのです。「きはじ」「スリッパの法則」「狐の顔」…
どれも、思わず誰かに話したくなるような、印象的な名前ばかりでしたね。

「図形問題って難しそう」と思っていたものも、「砂時計」、「ちょうちょう」、「リボン」、「ピラミッド」がないかなと探すことで、パッと図形のイメージが浮かぶようになります。身のまわりの図形や数に出会ったとき、自分ならどんな名前をつけるか考えてみるのも楽しいですよ。「〇〇の法則」「〇〇型」…そんなふうに名づけてみることで、きっと算数や数学がもっと身近に感じられるようになります。

(文責:みうら)

著者プロフィール 数学博識王みうら(三浦章)

みうら(三浦 章) math channelマガジン数学博識王

国立市在住。東京工業大学大学院修士課程を修了後、通信キャリヤで30年ほど通信サービスの研究実用化に従事。15年ほど前に、大学教員に転身。情報システム、数学、問題解決フレームワーク等を教えてきました。5年ほど前から地元公民館で月2回程度市民向け数学教室も開催しています。近頃は数学的背景のあるパズルに興味があり、その内容の発信にも関心があります。博士号(工学)、高校教員免許(数学)あり。

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この記事を書いた人

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国立市在住。東京工業大学大学院修士課程を修了後、通信キャリヤで30年ほど通信サービスの研究実用化に従事。15年ほど前に、大学教員に転身。情報システム、数学、問題解決フレームワーク等を教えてきました。5年ほど前から地元公民館で月2回程度市民向け数学教室も開催しています。近頃は数学的背景のあるパズルに興味があり、その内容の発信にも関心があります。博士号(工学)、高校教員免許(数学)あり。