こんにちは!math channelのしっしーです。
対話的な学びと参加型の授業について、いよいよ最後の記事となります。
最初の記事ではアクティブ・ラーニングと対話的な学びとは何なのか、そしてなぜ大切なのかについて取り扱いました。
2つ目の記事は対話的な学びの定義をご紹介したのち、誰と対話を行うのかについて取り扱いました。教職員、子どもどうし、地域の方やご家庭での対話を通じて、そしてテクノロジーを活用して、対話は様々な場面で行われるということでしたね。
3本目となる今回の記事では、いつ・どのように対話的な活動を行うのかという観点からお話します。
記事の最後では、対話的な活動を促すためにはどのような働きかけができるかについて、私の体験談を交えながらお伝えします。
対話的な学びについて、前回の記事に続いてさらに一緒に考えていきましょう。
いつ、どのように対話を行うのか
授業設計という観点から考えると、1つの授業の中で、子どもが対話を行うタイミングはいつが良いのでしょうか?
国立教育政策研究所の「学習指導要領を理解するヒント」の中では、「対話的な学び」を可能にするための教員側の視点として、「思考を交流させる」「交流を通じて思考を広げる」ことが紹介されています1。
この視点にも反映されているように、子ども達が対話的に学ぶためには、ただ「対話」するだけではなく、必ず「考える」ことが必要になりますよね。
「対話」と「考えること」の関係から整理すると、対話の活動のタイミングには便宜的に以下の3つのパターンが考えられそうです。それぞれについて、一緒に見ていきましょう。
- 対話する前に考える
- 対話しながら考える
- 対話した後に考える
対話する前に考える
まず、対話の活動の前に思考するパターンを考えてみましょう。
私たちの日常の場面を振り返っても、コミュニケーションを行うのは人に伝えたいことがあるからです。あらかじめ一度自分の考えを整理してもらう時間を取ってから意見を伝え合う。私が行う授業の中でも、このパターンの活動が多いように思います。
一度考えや考察を整理した後に他者の意見を聞くことで、より対話の必要性が生じ2、「なるほど」と学びが深くなることが期待されます。
対話しながら考える
次は、対話と思考が同時に起こる場合についてです。
例えばブレインストーミングをする際はこのパターンがとても有効であるように思います。私が大学生の時の授業で、あるトピックについてグループでどんどんアイデアを出していこうという時間があったことが記憶に残っています。
1人で出すアイデアにはどうしても限界があります。「三人寄れば文殊(もんじゅ)の知恵」という言葉があるように、1人では行き詰まってしまうことも、対話の中で、他者の意見を足がかりにすることで考えが深まる可能性があります。
対話した後に考える
最後に、対話の後に思考が来る場合についてです。
私たちの日常生活の中でも、まず人に相談して意見を聞いたり、人から問題提起があった後に、自分でネットや本で調査したり、自分自身で考えを巡らせて問題解決に至ることはありますよね。私自身の経験では、高校生の頃、ある職業の方が学校にいらっしゃり、話を聞くという学校のイベントがありました。
それまでその職業のことは事前知識がありませんでしたが、話を聞くことでイメージがわき、そこから関心を持ったことを覚えています。
まず対話が先にあり、着想を得てから考える。これも1つの対話的な学びではないかと思います。
「対話」と「思考」を有機的に結びつける
「対話」と「思考」に関する3つのパターン、いかがでしたでしょうか?
便宜上3つに分けましたが、実際の授業ではこれらのパターンを組み合わせることで対話的な学びを実現していくことになると思います。
例えば、私たちの住む社会の問題を扱う、高校や大学の英語の授業。以下の2つではどちらがより深い学習テーマの理解に繋がりそうでしょうか?
最初は「考えてから対話する」活動例。次は「考える→対話しながら考える→考える」と、3つのパターンを複合した活動例になります。
1.「考えてから対話する」の活動例
- 社会課題について関心のあるトピックを選び、調査し、自分の意見をまとめる(対話の前に考える)
- 発表し、他者からのコメントを受けつける(対話的な活動)
2. 「考える→対話しながら考える→考える」の活動例
- 社会課題について関心のあるトピックを選び、調査し、自分の意見をまとめる(対話の前に考える)
- ペアで対話する・またはグループで中間発表する(対話的な活動)
- 他者の意見・質問・発表を通じて考える(対話しながら考える)
- さらに調査を進める(対話した後に考える・対話をする前に考える)
- クラスで発表する(対話的な活動)
- 他者の意見・質問・発表を通じて考える(対話しながら考える)
- 発表終了後、社会課題についてのまとめ・振り返りを記述させる(対話した後に考える)
- 教員が全員の意見をまとめて紹介し、フィードバックする
単純化した例ではありますが、2番目の方が社会課題についての理解がより深まりそうですね。
このように、「思考」に対して「対話」をいつ行うのか、3パターンを有機的に結びつけることで効果的な対話的な学びを実現できると思います。
対話的な学びを促すために
最後に、対話的な活動を促すためにはどのような働きかけができるかを一緒に考えていきましょう。以下の3つに絞って、私の体験談をもとにお話しします。
- クラスを上手にコントロールする
- 教員がファシリテーターとなる
- 子ども達の輪に飛び込む
クラスを上手にコントロールする
まず、賑やかで活発なクラスを想像してみましょう。
対話が盛んに行われることはとてもいいことです。しかし、その内容が授業とは関係のないものであったり、子ども達のエネルギーが学び以外のところで発散されてしまうと困ってしまいますよね。
そんな時、「発言するときは手をあげる」など、あらかじめルールをしっかり決めることでクラス全体を同じ学びの目標に向かわせることができると思います。
また、対話の活動がついだらけてしまう場合、「この活動を○分間やります」とはっきり時間を区切ることで、メリハリがつく場合があります。
テレビのクイズ番組や大食い番組でも、緊張感が生まれるのは時間制限があるからですよね。私の授業でもよくタイマーを活用しています。
そして、発言の多い子や目立つ子ばかりについ意識を向けたくなってしまうのですが、発言が少ない子どもの意見や様子にも気を配ることが大切です。
クラス全体を巻き込んで対話的な学びを行うことで、学習成果が大きくなるように感じています。
教員がファシリテーターとなる
それでは想像の中で教室を見渡して、対話にあまり積極的でない子どもに目を向けてみましょう。
やることがわからなかったり、自分の考えに自信が持てない場合、子ども達は対話をすることに消極的になってしまう可能性があります。
math channelの講座でそんな子ども達の姿を目にしたときは、なるべく子ども達に分かりやすい言葉を選び、より個別に説明するようにしています。
例えば足し算の活動の例に考えてみましょう。
「5+2+9+・・・」と一息(ひといき)に考えるあまり、どこから考えればいいか分からなくなってしまう子どもがいたとします。そこで「5+2はどうなるかな? そうだね! そしたら、その数字と9を足すとどうなる?」と確認すると、子どもは理解しやすくなります。
反応を伺いながらゆっくり1対1で説明すると、わかってくれることが多いと思います。
そこから先は自分自身で考えることが可能になり、他の子ども達と対話をしやすくなります。
このように、1人1人の理解度に応じてヒントをあげたり適切な言葉かけをするなど、活動のファシリテーターとして子ども達と関わることも大切な観点です。
子ども達の輪に飛び込む
最後に、上記の「ファシリテーターとしての教員像」とも関係するのですが、私自身の経験として、教員が子ども達の話に入り、話を聞き、フィードバックをすることでより対話的な授業が実現できるように思います。
常に教壇の後ろから話をすると、どうしても一方的な授業になってしまいがちです。
机間巡視(子ども達の座席の間を歩き回ること)はもちろん、子ども達の目線に立って、教師自ら積極的に会話に参加する・子どもと対話をすることで、対話的な学びを実現する教室作りができると思います。
アクティブ・ラーニングや対話的な学びは教育界で注目されている
いかがでしたでしょうか。「アクティブ・ラーニング」や「対話的な学び」は現在教育界で注目されている、とても大きなテーマです。
この3回の記事では、様々な観点から「対話的な学び」について考えました。
教室やご家庭の中で「対話的な学び」を実現するために、ヒントになる内容があれば嬉しく思います。
また次の記事でお会いしましょう。
参考資料
(1) 主体的・対話的で深い学び
(2) 対話的な学びは,どうすれば実現できますか?
(文責:宍倉 一徳)
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