math channelにてコンテンツ開発を担当している「算数のお兄さん」ことよしだしんや(通称:しんやくん)です。
算数ゲームクリエーターとしても活動していて、九九カードゲーム「kukupon!(くくぽん)」を考案しました。九九の導入からマスターまで、遊びながら学べる教材です。
みなさんこんにちは!
算数セットの魅力についてお伝えするこの企画、前回は「数え棒」に潜む数々の工夫を紹介しました。
「さんすうセット」って何?
そもそもなんでこんなマニアックな記事を書いたの?
など、疑問に思った方はぜひ前回の記事から読んでみてください!
さて、今回は第2弾ということで「算数セット」と言えばこのアイテム、
「おはじき」
を紹介したいと思います!
「おはじき」のカタチ
まずはなんといってもこのカタチ!
可愛いお花が特徴的ですよね。別名「花はじき」とも呼ばれます。
現在でもほぼすべての会社の算数セットにお花型のおはじきが入っています。
そもそもおはじきってガラスでできた丸いおもちゃなのに、お花型にした理由が気になります……。
調べて分かったのは、花はじきは算数セットの前からおもちゃとしてあったということ。
プラスチック製造が可能になり、子どもにとって安心&安全になったことで、算数セットにもお花型のおはじきが採用されたと考えられます。
「おはじき」ってどんな場面で使うの?
算数の授業でおはじきを使う場面。教科書会社によって様々ですが、代表的なのは小学校1年生の単元「いくつと いくつ」でしょう。たし算やひき算の前に学習する「数の分解」の内容です。
例えば「6」。
6このおはじきを用意して2つにわけることを考えます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
すると「1と5」「2と4」「3と3」「4と2」「5と1」のように、5つの分け方を発見することができます。
他の数に対しても同じように考えることで、たし算ひき算学習への準備となります。
また、おはじきを使ってゲームすることを指示する教科書もあります(おはじき本来の使い方ですね)。
もちろんゲームで遊んで終わりではなく、学びへと繋げます。
おはじきを使ったゲームのルール
はじいたおはじきが止まった場所によって点数(1つ1点または10点)が決まるというもの。同じ個数ずつはじいて、その点数を合計して誰が勝ったかを考えます。
「10点が5個と1点が2個で52点」のように、十の位(くらい)、一の位など「数の位取り」の学習になるわけです。
実は算数セットのケース(お道具箱)のフタを裏返すと、このゲームのボードが印刷されています!(いたれりつくせり!)
ケースにも工夫が⁉
たかがケース。されどケース。
実はおはじきのケースには「そこまでする⁉」と言いたくなる工夫があります。
まずは見てみましょう。
中は仕切りによって2つに区切られていて、それぞれに独立したフタがついています。一方のフタのみ透明。そして容器の側面には細長い四角の穴……。
もしかして……。
そうです! 「貯金箱」なんです!
は? と思ったかもしれません。
もちろん、お金を貯めるためではありません。
お金(硬貨)ではなくおはじきを入れていくんです。
まずはケースに入れるおはじきの個数を決めます。
例えば6個にしましょう。
その後、1枚ずつ側面の穴から落とし入れていきます。
すると仕切りにぶつかって、おはじきがランダムに左右に分かれて入っていきます。
6枚全部を入れきったら、透明なフタから見える個数をかぞえます。
もうお分かりですね!
「いくつといくつ」の学習をするためのケースだったのです!
透明なフタの方からは4個のおはじきが見えるので、もう一方の部屋には2個のおはじきがあると考えます。「6は4と2」のように練習ができるわけです。
「いくつといくつ」の学習をするためだけに、専用の金型を設計してケースを作る。
もうここまでくるとですね、NHKの「プロジェクトX」級の重みを感じずにはいられないです!(プロジェクトX、今の小学生には伝わらないですね涙)
あなたが使っていたのはどれ?おはじきのバリエーション
おはじきにはいろんなバリエーションがあります。一つずつ見ていきましょう。
磁石付きタイプ
裏面に磁石がついていて、付属のスチールボードに貼り付けて使うことができます。
リバーシブルタイプ
表と裏が違う色になっています。このデザインは、「なんばんめ」の単元でもおはじきが使えるよう工夫したものです。
具体的には、同じ色で一列に並べた後、1枚だけ裏返すことで「(右or左から)なんばんめ」と学習することができます。
連結タイプ
それぞれについている突起と穴で、四方に連結することができます。連結させることでおはじきの集まりが明確になり、「数のイメージ」や「計算の操作」が捉えやすくなります。実はこのタイプが一番レアだったりします……。お持ちの方は大切にしてください(笑)
六角形タイプ
脱お花型!
六角形にしたことでおはじき同士をピタッと並べることができます。
また、六角形の形を生かして「かたちづくり」の単元(1年生教科書では正六角形の板は扱いませんが)でも使うことができます。
実は裏返すと……
お花の形が彫ってあるんですよね!
算数セットの名残を忍ばせる教材会社さんの遊び心に痺れます!(憎いね、三菱。的な笑)
最後に
算数セットの魅力~おはじき編~はいかがだったでしょうか。
お花型という基本は崩さずに、いろいろな機能が付いていることを知っていただけたと思います。
また、お道具箱やケースといった付属品に至るまで、おはじきでの学習をより豊かにする「手の込んだ」工夫が詰まっていました!
算数セットはあくまで学習のための補助ツールですが、あえてその「モノ」自体に焦点を当てることで面白い世界が見えてくる、と第1回に引き続き知っていただければ幸いです。
次回は「数ブロック編」を予定しています! お楽しみに!
(文責:よしだしんや)
■参考