中学入試の算数指導歴30年 滝澤です。
2月は関東を中心に多くの中学校で入試本番の月であるとともに、多くの塾で新学年がはじまる月です。
新しい学年になって授業時間が変わったり、宿題の量が変わったりしてなかなかペースがつかめない、というお子さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような訳で、何か打開策を打たなくてはと考える保護者の方から,2月から3月にかけて多いのが「中学入試対策で、算数のオススメの問題集を教えてほしい」という質問です。
そこで、本日は算数のオススメ問題集を紹介したいと思います。今は授業と宿題で手一杯でしょうから、なかなか新たに別の問題集に手を出すのは勇気がいるかもしれません。
これは「やらなければいけない」のではありません。あくまでも参考にしていただけると幸いです。
参考書・問題集を買う前に大切なこと
保護者の方(お父様であることが多いようです)が何冊も問題集を買ってきて、結局どれもまともにやらずに本棚の肥やしになっている、という話をよく聞きます。
そうならないためには、参考書や問題集を買う前に、「目的をしっかり理解しておくこと」が重要です。
主な目的には以下のようなものが考えられます。
- 毎日の学習習慣の確立
- 算数の知的好奇心の育成
- 中学入試算数 全範囲の学習とその補完
- 小学6年生向けの総復習
- さらに高いレベルを目指したい方向け
1つ1つ紹介していきましょう。
目的1.毎日の学習の定着・習慣化のため
これには、毎日の計算ドリルや一行問題などがいいでしょう。
特に「朝起きてから学校に行く前に学習する」など規則正しい生活習慣を身につけるためにも、このような問題集があるといいですね。
短時間(15分以内)にひと区切りできるような問題集を選ぶとよいと思います。
問題集には直接書き込まず、専用のノートをつくって筆算や途中式なども必ず書きましょう。
答え合わせは必ず保護者の方がしてあげてください。
間違い直しとともに、どのようなミスをしたのかをしっかり記録しておくことが大切です。
オススメなのはこちらの2種類です。
マスター計算1095題 一行計算問題集(著:日能研教務部)みくに出版刊
3問ずつが1セットになった問題集です。
1年生用から6年生用まであります。
この問題集のおすすめの使い方を、こちらの記事でも紹介しています。
実力突破 算数 計算と一行問題 基本編・発展編(中学入試指導研究会)受験研究社刊
小学6年生用の計算・一行問題です。
これらはともに、1回3題ずつという問題構成になります。
目的2.算数の知的好奇心を育成する
これは通常の学習とは別に、算数や数学に関する知的好奇心を刺激するような本や参考書ということになります。
例えば、算数の図鑑やいわゆる脳トレ問題集などがこれにあたります。勉強と勉強の間のちょっとした息抜きに使うのもよいでしょう。
しかし、子どもによってはおもしろすぎて逆に勉強時間が少なくなってしまう、という声も聞かれますから、1日の時間制限が必要かもしれませんね。
オススメなのは以下の3つのシリーズです。
5分で論理的思考力ドリル(著:ソニー・グローバルエデュケーション)学研プラス刊
考える力が身につく! 好きになる 算数なるほど大図鑑 (監修:桜井進)ナツメ社刊
算数おもしろ大事典IQ 増補改訂版(監修:秋山久義・清水龍之介・高木茂男・坪田耕三・石原淳)学研プラス刊
以上の3つが私のおススメですが、図鑑はこれ以外にも本屋さんに行くとたくさん並んでいます。
ぜひ親子で本屋さんに行って実際に手にとって面白そうなのものを選んでみるといいでしょう。
目的3.算数の出題範囲すべてを網羅する
中学入試対策の塾では、小学4年生から小学6年生の3年間で、中学入試で出題される内容を網羅するカリキュラムを作成しています。
そのカリキュラムごとに典型的な問題とその解法を理解し覚えていくのが通常の学習です。これらを網羅している通年テキストおよび参考書などがこれにあたります。
塾に通われていない方は、この類いの通年テキストが必要になります。また、塾に通われている方は、塾のテキストでは理解しづらいところを補完できる参考書を探している場合などがこれにあたります。
オススメなのは以下の2つのシリーズです。
通年テキストとして
予習シリーズ(四谷大塚)
塾に通われていて通年テキストがある方は購入する必要はありませんが、塾に通わずに中学受験用の学習をしたいという場合は、通年テキストを利用しましょう。ただし、通年テキストとして誰でも手に入れることができるものは本当に限られています。四谷大塚の『予習シリーズ』典型的な問題をしっかり網羅してありますし解法などもていねいですからオススメです。
こちらは書店では手に入れることができません。四谷大塚のホームページから購入することができます。
参考書として
秘伝の算数 入門編・応用編・発展編(著:後藤卓也)東京出版刊
こちらは問題集というよりは、例題とその解法をしっかり読んで典型題の解法暗記とその解法の根拠をしっかり理解するための参考書となります。
問題数は少ないので演習量はこれだけでは足りませんが、一字一句読み飛ばさずしっかり読み込めば、最難関校で出題される問題でも対応できる定石・鉄則などが身につきます。
解説の口調もとてもフレンドリーが楽しみながら読める工夫が随所にされています。
目的4.小学6年生向けの総復習及び実力アップのための問題
受験を目前にひかえた小学6年生にとって必要なことは、正解することだけではありません。
正解を出すために最も効率のよい解法の選択が必要です。適切な解法パターンの習得のためには、単元ごとに厳選された短め問題を使って総復習をすることが効果的です。
このとき使う問題集は、あまり分厚くはない方がいいですよね。2~3か月で全単元を網羅できるくらいの問題量がいいと思います。
総復習のときに大切なのは、必ず式や答えをていねいに書くことがです。アウトプットすることによって適切な解法がしっかり身に着きます。
オススメ問題集はこちらです。
算数プラスワン問題集(著:望月俊昭) ステップアップ演習 東京出版刊
こちらは『中学への算数』で有名な東京出版さんが出版しているロングセラーの問題集です。これらが中学入試の算数のバイブルだとおっしゃる先生もいらっしゃいます。
この問題集に載っている問題の解法がすべて頭に入れば、算数については心配ありません。
ただし、面白みはあまりありません。ある程度学習習慣がついて、自ら算数の学力を向上させたいという強い気持ちがなければ、やりとげるのは難しいかもしれません。
スピードアップ算数 基礎・発展(著:栗田哲也)文一総合出版刊
『プラスワン問題集』や『ステップアッ』プ演習は少々とっつきにくい、楽しくないと思われる場合には、こちらの問題集がオススメです。
解説も語りかけるような優しい言い回しですし、載っているイラストなどもゆるい空気感で、思わず楽しく勉強できるような内容です。
しかしどちらかというと難易度の高い問題が多く、難関校を目指す方向けともいえます。
目的5.さらに高いレベルを目指したい方向け
ここまでに紹介した問題集は、比較的典型的な良問を集めた問題集です。しかしたまに「難しい問題の練習はしなくてもいいのでしょうか?」と聞かれることがあります。
先日、灘中学の合格を見事に勝ち取った生徒に、今までやった問題集は何かをたずねたところ、「秘伝の算数3冊」、「プラスワン問題集」、「ステップアップ演習」だけでした。
もちろんそれ以外に塾でのプリントがあります。灘中学では入試の際の得点開示もあり、それによると算数は合格者平均点をしっかり取っていましたので算数の実力としては申し分なかったかと思います。
では、難しい問題を解く練習は必要ないのか?と聞かれれば、「一人ひとりによって異なります」とお答えするしかありません。
難しい問題ですから、自力で解けないこともあるでしょう。
正解することよりも解答解説をしっかり読み込む力が必要ですし、できないことが多く見つかりますからかなり精神力が強くなければ難しいでしょう。
それでも挑戦したい、難しい問題を解くのか楽しいというお子さんは、1日1問か2問ずつ、練習してみるのもよいかもしれません。
オススメ問題集はこちらです。
必ず解きたい算数の100問 中学への算数 増刊 東京出版刊
毎年5月に発売される問題集です。その年と1年前の2年間の入試問題の中から、様々な有名塾の先生方が厳選し、ていねいに解説を書かれた100問が載っています(私も毎年1問寄稿しています)。
かなり難しい問題も載っていますが、ふだんから現役で指導されている方々が来年度入試を見据えて問題を選び、わかりやすく解説をしていますので確実に力はつきます。こちらをやってみて楽しければどんどん進めていくとよいと思います。
ちなみにさきほど紹介した灘中に合格した生徒は、もちろんこちらの問題集を持ってはいますし、何問かは解いてみたそうです。自分で合う合わないを判断することが大切です。
問題集を選ぶコツ
私が指導する生徒たちによく薦めている問題集は以上になります。
しかし本屋さんに行って頂ければわかりますが、これ以外にも「塾技」や「特進クラス」など有名な問題集はたくさんあります。
参考書や問題集を買う場合、保護者の方だけが本屋さんで買われることが多いかもしれませんが、本当は子どもが実際に手にとって何ページかを見て気に入ったものを買われるのがいいと思います。
一応選ぶ際の目安を書いておきましょう。
- 厚すぎない、重すぎないこと。
- 解説が詳しいこと
- 言い回しがやわらかく、とっつきやすいこと。
- 思わず笑ってしまうようなゆるさがあること
要するに、子どもにとって気軽にやってみようと思える問題集が1番大事だということです。
「合わなければ別の問題集を試せばいいからね」くらいに言ってあげると、子どもが自発的に問題集を選びやすいかもしれませんね。
できないことを見つけることが最大の目的です
問題集の選び方についていろいろと書いてきましたが、最も大切なことはオーバーワークにならないように心がけることです。
特に算数はわからない問題、できない問題があると時間が長くかかりがちです。なぜそうなるかというと、「自分の力で解けなければいけない」と勘違いしているからです。
解けなければ「解答・解説」をすぐ見てしっかり理解することの方が大事です。もちろんそれだけでは、同じ問題をもう一度解こうと思っても解けないかもしれません。その場合はもう一度「解答・解説」をしっかり読んで理解するだけです。
目安は長くとも1問15分までということにするとよいでしょう。できないことをできるようになるまで何度でも何度でも同じように練習し続ければよいのです。
問題集は自分ができないことを見つけるための本なのです。
動画でも解説しました。ぜひご覧になって下さい!
(文責:滝澤幹)