こんにちは、みうらです。
皆さん、「三平方の定理(またはピタゴラスの定理)」と聞くと、聞いたことがあるという方が多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、このピタゴラスの定理を使った、ちょっとした図形のパズルです。
ほとんど計算は不要です。基本となるいくつかの図を理解し、それを使えば解ける問題ばかりです。
さて、三平方の定理で最もおなじみなのは、おそらく次の図でしょう。
直角三角形の3辺それぞれに正方形を描き、その面積の関係から「斜辺を1辺とする正方形の面積は、他の2辺をそれぞれ1辺とする正方形の面積の和に等しい」というものです。

そして、具体的な長さとしては「3・4・5」の直角三角形が有名です。そのほかには、「5・12・13」もあります。

今回は特にこの図をよく覚えていてください。
直角三角形、どこに隠れているかな?
それでは、問題を出します。
【問題1】 半径1 cm、2 cm、3 cmの円が互いに外接しています。3つの円の中心を結んでできる三角形の面積は何cm²ですか。

[解答1] 互いに外接しているため、円の中心間の距離はそれぞれの半径の和になります。
したがって、三角形の三辺の長さは以下の通りです:
- 半径1 cmと2 cmの円の中心間:1 + 2 = 3 cm
- 半径2 cmと3 cmの円の中心間:2 + 3 = 5 cm
- 半径1 cmと3 cmの円の中心間:1 + 3 = 4 cm
つまり、三辺は 3 cm、4 cm、5 cm の三角形。これは、図でお見せした直角三角形です。
ですから、面積は、$\frac{1}{2}×3×4 = 6$ cm2 です。

【問題2】 半径4 cmの大きな円と半径1 cmの小さな円が、点Cで外接しています。
それぞれの円は、点A・点Bで共通の接線Lに接しています。
このとき、点Aと点Bを結んだ線分ABの長さは何cmですか?

[解答2] 図のように円の中心同士を結ぶ線と、共通接線Lを利用して図を考えましょう。
- 大きな円の半径は4cm、小さな円の半径は1cmなので、中心同士を結ぶ線の長さは 4 + 1 = 5 cm。
- 両方の円の中心から接点A・Bに下ろした垂線の長さは、それぞれ 4 cm と 1 cm。
- これにより、直角三角形ができ、その三辺は 3 ㎝、4 ㎝、5 ㎝。
またしても、3辺が3 ㎝、4 ㎝、5 ㎝の三角形が浮かび上がってきました。答えは4 ㎝です。

【問題3】 台形と半円が図のように接しています。円の直径は何 ㎝ ですか。

[解答3] 円の外にある1点から円に向かって接線を引くと、通常2本の接線を引くことができます。そして、この2本の接線の円の外の点から接点までの長さは、必ず等しくなります。
なぜそうなるのでしょうか?

それは、できあがる2つの三角形が合同になるからです。
具体的には、円の中心と接点を結ぶ線(半径)は接線と直角に交わるため、どちらの三角形も直角三角形になります。また、共通の辺(外の点から円の中心への線分)を持ち、半径の長さも等しいため、斜辺と他の1辺が等しい合同条件(直角三角形の合同条件)が成立するのです。
したがって、図の中に長さを書き加えると、これまた、三辺が3 ㎝、4 ㎝、5 ㎝の三角形が浮かび上がってきます。答えは4 ㎝です。

おわりに
いかがでしたか?
今回は、ほとんど計算をせずに楽しめる、三平方の定理に関する問題をご紹介しました。すべて「3・4・5」の比で直角三角形ができるという基本的な知識と、その三角形がどこに隠れているかに気づけば、すぐに解ける問題ばかりだったと思います。
お友達にパズルとして出すときには、「5・12・13」の三辺を使った直角三角形のパターンにすると、少し難易度が上がって盛り上がるかもしれません。
実は、三平方の定理の世界はとても奥深く、証明方法だけでも数百種類あるといわれています。
有名なピタゴラスをはじめ、アインシュタインやガウスといった数学者たちも、それぞれ独自の証明を残しています。
さらには、アメリカの第20代大統領ジェームズ・ガーフィールドまでもが、ユニークな方法でこの定理を証明したという逸話もあります。
三平方の定理は、面積の関係から説明できることも多く、それを応用した面白い問題もたくさん存在します。
次回は、そんな「面積」に注目した三平方の問題を取り上げる予定です。どうぞお楽しみに!
(文責:みうら)
著者プロフィール 数学博識王みうら(三浦章)

みうら(三浦 章) math channelマガジン数学博識王
国立市在住。東京工業大学大学院修士課程を修了後、通信キャリヤで30年ほど通信サービスの研究実用化に従事。15年ほど前に、大学教員に転身。情報システム、数学、問題解決フレームワーク等を教えてきました。5年ほど前から地元公民館で月2回程度市民向け数学教室も開催しています。近頃は数学的背景のあるパズルに興味があり、その内容の発信にも関心があります。博士号(工学)、高校教員免許(数学)あり。
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