「植木算」を応用すれば、イメージしにくい問題もあっという間に解けちゃう!?図解でわかりやすく解説します/中学受験で必須!「植木算」を極める【その3】

こんにちは、みうらです。

いよいよ“植木算を極める”も最後の回になりました。前回までの話をまとめると、植木算の本質は、道路がいくつかの区間に分かれているときの、区間と木の対応関係を考えることでした。

木を点とみなすと、植木算の本質は、

1本の線(ループを含め)を点で分けるときの、区間の数と点の数の関係を考えること

です。今回(その3)は、植木算の考え方を用いた話題です。中学生以上の方にも楽しんでいただけるように多少文字式を入れた説明もします。文字式がわかりにくければ、読み飛ばしても大丈夫です!

前回の復習

復習に次の問題はいかがでしょう。

問題1) 図は凸凹公園の地図です。南門からはY字路が北側に伸びています。この道路沿いには入り口からY字路の行き止まりまで片側に5メートルおきに桜の木が植えます。北門から南に伸びる道路の先には池があります。この北門入り口から道路沿いと池に沿って10メートル間隔でケヤキの木を植えます。
桜の木とケヤキの木はそれぞれ何本必要でしょうか?

考え方のポイント
木の植える様子を実際に書くのは面倒です。そこで道を分割して、重複しない(1カ所に2本の木を植えない)ように注意しながら本数を求めましょう。

問題1 解答

Y字路:3つの道路は、それぞれ100÷5=20区間に分かれます。100mの道路の両端に植える場合の本数は21本です。Y字路の場合、単純に足し合わせると3つの道路の交わった点で3本重複して数えていることになりますので、2本分を引いて、21×3-2=61本となります。

北門の道路と池: 道は、50÷10=5区間に分かれ、池は300÷10=30区間に分かれます。北門の道路の両端に木を植えるので、道路の木の本数は6本(=5+1)です。池の周囲には30本植えることになります。ただし道路と池の出会った場所の木を重複して数えていますから、合わせて、6+30-1=35本となります。

区間の数と点の数の関係に注目!

では、今回のメインテーマです。問題を2つ出します。この2問、考え方は全く同じです。植木算の本質を理解していると解けるはずです。

問題2

正方形を縦に3個、横に4個並べて3行4列の長方形を作りました。この長方形の対角線が横切る正方形の個数を求めてください。

問題3

立方体を縦に3個、横に4個並べ、それを5層に重ね、直方体を作りました。この直方体の対角線が横切る立方体の個数を求めてください。

できましたか。どこが植木算なのかわかれば、解けたも同然です。
では、解説します。

問題2 解答 

長方形の中には、横方向の線分が2本、縦方向の線分が3本ひかれていることになります。対角線は、横方向の線分とは2カ所で、縦方向の線分とは3か所で交わります。対角線は横方向の線分と縦方向の線分の交点を通ることはありません。3と4は互いに割り切れない数だからです。(これを数学の世界では、“互いに素である”、といいます)

このことから、対角線は、横と縦に引かれた線分とは、2+3=5カ所で交わることになります。つまり道(対角線)は5本の木(交点)で区間に分かれていることになります。両端に木を植えない道では

区間の個数-1=木の本数」でしたので

区間の個数=木の本数+1=5+1=6

です。

区間は正方形と1:1に対応します。従って、

対角線が横切る正方形の個数=6

となります。

これで、縦に1000個、横に1001個の正方形を並べた長方形の対角線が横切る正方形の個数も一瞬で求められます。まず、1000と1001個が互いに素であることを確認しましょう。1000=23×53、1001=7×11×13ですから、OKですね。対角線は、横方向の線分とは999(=1000-1)カ所で、縦方向の線分とは1000(=1001-1)か所で交わります。つまり、対角線は、縦横に引かれた線分とは、999+1000=1999カ所で交わることになり、対角線は1999+1=2000個の区間に分かれていることになります。つまり、

対角線が横切る正方形の個数=2000

となります。図は書けなくても、値は求めることが可能であるという算数(数学)の醍醐味を感じていただけたら嬉しい限りです。

参考:公式にしてみると?

参考までに、公式にしてみましょう。a、bを互いに素とするとき、a行b列の正方形からなる長方形の場合、対角線が通過する正方形の個数を求めます。

木の本数=対角線上の交点の数=(a-1)+(b-1) ですから、

横切る正方形の個数=木の本数+1=(a-1)+(b-1)+1=a+b-1

問題3 解答

問題3は、問題2の空間バージョンです。最初から一般化して考えてみましょう。 a、b、c を互いに割り切れないものとし、立方体が a×b×c 個ある場合、

木の本数=対角線上の交点の数=(a-1)+(b-1)+(c-1)=a+b+c-3 ですから、
横切る立方体の個数=木の本数+1=a+b+c-2

a=3,b=4,c=5 を代入すると、
横切る立方体の個数=木の本数+1=3+4+5-2=10
となります。

この2問では、実際に描けなくても、試すことが出来なくても、解答が出せました。算数や数学は何と素晴らしいことでしょう!

おまけを、1題。

問題4

長方形の細長い紙を図のように折り重ねます。紙が5枚重なった部分をハサミで切りました。長方形は何枚に分かれたでしょうか。なお、折り方は長方形のある1辺を決め、それに平行になっていれば、後は自由です。

問題4 解答 

まずは、紙を道と思いましょう。切るところに赤丸をつけます。5個赤丸が付きます。これを木と思うことにします。するとこの問題は、両端に木を植えない道とみなせますから、区間は6個(=5+1)です。つまり、紙は6枚に分かれます。

おわりに

これで、植木算についての3回にわたるお話は終わりです。いかがでしたか。

植木算で大切なのは、区間の長さそのものではなく、木と区間の1対1の対応関係を考えることです。この点をしっかりご理解いただけたかと思います。実は、この視点は、日常生活やさまざまな場面でも役立つことが多く、身近な出来事にも応用できます。ぜひ、日常の中で取り入れてみてください。経験を通じて、植木算が解けるだけでなく、効率的かつ論理的に物事を捉える力が身につくことを願っています。

(文責:三浦章)

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この記事を書いた人

みうら(三浦 章)のアバター みうら(三浦 章) math channelマガジン数学博識王

国立市在住。東京工業大学大学院修士課程を修了後、通信キャリヤで30年ほど通信サービスの研究実用化に従事。15年ほど前に、大学教員に転身。情報システム、数学、問題解決フレームワーク等を教えてきました。5年ほど前から地元公民館で月2回程度市民向け数学教室も開催しています。近頃は数学的背景のあるパズルに興味があり、その内容の発信にも関心があります。博士号(工学)、高校教員免許(数学)あり。