こんにちは!math channelのしっしーです。
これまで3回にわたり、「クリエイティブな学び」について考えてきました。
今回からは、対話的な学びと参加型の授業をどのように実現するかについて、3回にわたって扱っていきます。まず初めに、アクティブ・ラーニングと対話的な学びとは何か、そしてそれがなぜ重要な考えなのかについて一緒に考えていきましょう。
アクティブ・ラーニングとは
新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の観点から教育のあり方を見直そうとしています1。(「主体的・対話的で深い学び」は英語で”proactive, interactive and authentic learning”と訳されます2。)
アクティブ・ラーニングは、子どもたちによる能動的な学びのことです。
従来、日本の教育は教師主体による一方向的(教師から子どもたちへ)な講義スタイルが多かったと言われていますね。
最近では、子どもたちを授業に能動的に参加させる、つまりアクティブ・ラーニングを実現することが必要だと考えられています3, 4。
それでは、なぜアクティブ・ラーニングが大切なのでしょうか。
私の学生時代を振り返ると、ちょっとした失敗談があります。それは化学についてです。
高校生の頃、2年間(3年間かも?)学校の授業で、さらに高校3年生の時は1年間塾に通い、化学をみっちり勉強しました。しかし、どれだけ学習しても得意になれません。当時の大学入試センター試験では他の科目に比べて点数があまり取れず、悔しい思いをしました。
当時の私は授業中、黒板の文字をノートに書き写して、先生の説明を聞くことに必死でした。そして「これだけノートを書いたのだから」と勉強したつもりになっていました。
でも、やみくもにノートを取る能力を向上させても、必ずしも本質的な理解につながるとは限りません。
もちろん自宅で多少なり問題練習は行っていましたが、与えられたものを受け取るという「受け身」的な学習になってしまっていました。
今振り返ると、予習をして何が分からないかを把握してから授業に臨んだり、積極的に先生に質問したり、もっと能動的に学習を行うべきだったなと思います。科学博物館や図書館などの施設を活用したり、友達と議論して知識を整理することもできたかもしれません。
知識をただ受け取るだけでなく、考えていることを活性化させながら、能動的に学ぶこと。学習者側としては、このことが学習効果を高めるために大切になります5。そのために教員側ができることとして、参加型の授業を考えるということになると思います。
対話的な学びとは
さて上で少し触れたように、アクティブ・ラーニングを実現するためには「主体的・対話的で深い学び」を実現する必要があります。今回は「対話的な学び」について掘り下げていきます。
「対話的な学び」とは、文科省の言葉を借りると「子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める」学びのことです1。
それでは、なぜこの対話的な学び(”interactive learning”) を実現することが大切なのでしょうか。様々な理由があると思いますが、私の考えるメリットについてお話します。
まず子どもたちの立場で考えてみましょう。子どもたちが「受け身」的に学習する授業では、教員が必死に授業を行っていても、子ども側がどのようにその話を受け止めているかまでは分かりません。たとえば以下のように、学習内容とは全く関係ないことを考えているかもしれません。
お腹すいたな、今日のお昼ごはんはカレーかな?
先生はこの授業で30回『えーっと』と言ったなあ
○○くんとけんかしてるから、休み時間が気まずいな
昨日遅くまでテレビ(YouTube)を見てたから眠いなあ
これは大人でも同じです。会議で誰かが長時間話している最中、つい他のことを考えてしまう経験は誰でもありますよね。英語では”hear”(耳に入る)と”listen”(注意して聞く)で意味を区別しますが、ただ音が耳に入っていても集中していなければ、学習効率は下がってしまうのです。
それに対して、会話をするためには人の言うことをよく聞いて、それに対する自分の意見を述べなければなりません。
また、人に対して説明をするためには、前もって準備・調査をしたり、知識を頭の中で整理し、言葉を選びながら内容を伝達する必要があります。
対話的な学びはより能動的な学びであるということ、お判りいただけるのではないでしょうか。
対話や自分から説明を行うことで、学習内容についての自分の知識を問い、理解を深めることができます。そして、その分記憶にも定着しやすくなると考えられます。
対話的な学びは教員にもメリットが
また対話的な授業を行うことで、教員側にもメリットがあります。それは子ども一人一人の理解度の把握がよりスムーズになるということです。
52−37=15 (繰り下がりのある引き算) を例にとって考えてみましょう。ある子は12-7をうっかり計算間違いしてしまうかもしれません。ある子は繰り下がりがあるのを忘れて、答えを25としてしまうかもしれません。ある子は繰り下がりの仕方自体を忘れて、「2−7ってどうやるの?」とつまづいてしまうかもしれません。
対話的な授業をすることにより、一人一人何が分からなかったのか「つまづきポイント」を把握できれば、子どもたちの理解度に応じて強調するポイントを変え、授業進度を調整することができます。授業改善が容易になりますね。
インプットとアウトプットのバランスを考える
今回の記事では、アクティブ・ラーニングと対話的な学びとは何か、そしてなぜ大切なのかについてお話しました。もちろん、参加型の授業を行う上で、子どもに学習内容に対する知識をしっかり伝えることも必要です。子どもにとって、広い意味での「インプット」と「アウトプット」のバランスを意識しながら、授業を行うことが大切ではないでしょうか。
次回の記事では、具体的にどのように対話型の学びを実現する参加型の授業を行うかについてお話します。私自身も教員として、日々試行錯誤しています。一緒に考えていきましょう。
参考資料
(1) 新しい学習指導要領の考え方ー中央教育審議会における議論から改定そして実施へー
(2) 小学校学習指導要領 第1章総則
(3)アクティブ・ラーニングとは?文部科学省が推進する理由と3つのポイント | キャリア教育ラボ
(4) アクティブ・ラーニングに関する議論
(5) アクティブ・ラーニングとはなにか [2014年度 No.1]
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