こんにちは!
今回より連載を担当させて頂くことになりました、しっしーと申します。
私はこれまで中学校、高校などで英語の講師として働いてきました。math channelでは、小学生への算数の講座やコンテンツの制作をさせて頂いています。
私は算数が専門ではないのですが、講師として子どもから大人まで、これまで様々な人たちと関わってきました。
「良い授業を届けたい!」「学びの楽しさを伝えたい!」と日々奮闘しています。
私の連載では、教え方や子どもたちとの関わり方など、教育に関する様々な内容を扱っていく予定です。
まだまだ修行中の身ではありますが、教育に携わる方々にとって、少しでも役に立つ内容になれば幸いです!
どうぞよろしくお願いします。
最初の連載テーマは、クリエイティブな活動についてです。
math channelに講師やコンテンツクエイターとして関わらせて頂く中で大切にしているテーマの一つに、「クリエイティビティ」があります。
では、そもそも「クリエイティビティ」とはなんなのでしょうか?
そして、なぜ、クリエイティブな活動を授業の中に取り入れる必要があるのでしょうか?
今回の記事で一緒に考えていきましょう。
クリエイティビティがなぜ大切か
「クリエイティビティ」はよく「創造性」などと訳されます。出発点として、英語の辞書の定義を読んでみましょう。
ある英語学習者向けの辞書で「クリエイティビティ」を引くと、以下の定義が書かれています。
”the ability to use your imagination to produce new ideas, make things etc”
(Longman Dictionary of Contemporary English)
日本語訳すると、「想像力を使って新たなアイデアや物事などを生み出す能力」ということです。
この能力は、いったいなぜ大切なのでしょうか。
「事実を学ぶ」だけでなく、「考える」
クリエイティビティを考える際に、私はアインシュタインのこの言葉を思い出します。
”Education is not the learning of facts, but the training of the mind to think”(教育は事実を学ぶことではなく、考える頭を養成することだ)
Albert Einstein
少しテーマを広げてみましょう。
ちょっと大きなことを言ってしまうかもしれませんが、100%変わらない、当たり前の事実というものはこの世に存在するのでしょうか?
例えば歴史はどうでしょう。
「ある時代がいつから始まった」、「ある偉人がいつ何々をした」などと習います。しかし、新しい研究成果によってそれらはガラリと覆されてしまうことも起こりうります。
科学はどうでしょうか。
私は専門家ではありませんが、これまでの歴史を考えると、当時信じられていた理論が覆されるケースは珍しくなかったようです。
習ったこと、覚えたこと、当たり前だと思っていることが100%!という保証は、実はどこにもないわけです。
また、最近では、新型コロナウイルス感染症の大流行が起こりました。
感染拡大防止のためのマスクの着用や「密」の回避、リモートワークなど、コロナウイルスによって社会も大きく変わりましたね。
当たり前が当たり前でないことを、誰もが痛感したのではないでしょうか。
ただ何かを「事実」として機械的に覚えるだけではなく、それを自分の発想と組み合わせて新たなアイデアや物事を生み出すこと。
授業の中で学んだ知識を、実社会や実世界に結びつけて、新たな価値を自ら作ること。
当たり前の答えがない時代だからこそ、クリエイティビティがいかに大切な能力なのかが実感できるのではないでしょうか。
「生きる力」や「STEAM教育」
クリエイティビティの育成の必要性は、最近の教育全体の流れの中にもマッチしています。
平成29・30・31年に改定された新学習指導要領では「生きる力を育む」を新たな教育の目標に打ち出しました。
それを達成するための一つの柱として掲げられているのが、「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力」とされています1。
(未知の状況に対応する、まさにコロナウイルスの流行した現代に必要な能力ですね)
「クリエイティビティ」と言葉こそ少し異なりますが、文科省も自ら考えることを昨今ますます重要な能力だと捉えているようです。
さらに、最近ではよくSTEAM教育という言葉がよく聞かれるようになりました。
STEAMはScience、Technology、Engineering、Arts、Mathmaticsの頭文字で、ただ事実を機械的に学ぶだけでなく、自ら新しい価値を創造することのできる人材を育成2するための教育方針です。
クリエイティビティの育成は、STEAM教育の目指す方向性にかなり近い、と言えそうです。
大学教育でも大切になるクリエイティビティ
ここまで主に初等教育、中等教育(小学校・中学校・高等学校)について考えてきましたが、クリエイティビティは高等教育(大学での教育)においても大切な能力です。
高校までの教科学習では与えられる問題に対して明確な解答があることが多いですが、大学からはそうではないというのは、よく言われることだと思います。
特に大学に入学すると、「自ら考え、問いを設定する」ことがとても大切になってきますよね。
研究者として活躍する上ではもちろんのこと、学部生として卒業論文を書く際でも、「何をテーマにするのか」「何が疑問なのか」と、常に自分に質問していくことが必要になります。
青年期以降にますます重要になるクリエイティブな能力。
幼児教育はもちろん、初等教育などの早い時期から、柔軟に考えさせる力を鍛えることは大切ではないかと思っています。
「創造的問題解決」が大切と考える教員は93%以上
それでは、実際の教育現場では、教員はクリエイティビティ育成の大切さをどのように捉えているのでしょうか。ここに一つ興味深い調査結果があります。
2017年にAdobeは日本の学校教育における「創造的問題解決能力」(「創造性に富んだ革新的な方法で問題や課題に取り組む」能力)の重要性について、学校の教員にアンケート調査を行いました3。
その結果、小学校、中学校、高校の教員200人のうち93%、そして大学以上の教員200人のうち94%が「創造的問題解決」を学ぶことを重要と答えたそうです。
そして、「創造的問題解決能力を育成する授業」を「取り入れる方法の検討が必要」だと考える教員は、小中高で85%、大学以上で84%だったとのことです。
このアンケート調査によると、実は多くの現場の教員が、クリエイティビティに関する能力とそれを育成することの大切さを認識しているのですね。
授業にクリエイティブな活動を取り入れると?
さて、子どもたちのクリエイティビティを育成するために、授業の中にクリエイティブな活動を取り入れることが必要となるでしょう。
クリエイティブな活動を行うことは、クリエイティビティを育てること以外にも、以下のような利点があります。
まず、子どもたちに自分で主体的に考えさせることで、彼ら彼女らに深い理解を促すことができます。
例えば算数・数学においては、「ただ公式を表面的に暗記し、与えられた問題を解く」というプロセスだけでは、受験などで出題される未知の問題に対応できないことがあると思います(何を隠そう、私自身がそうでした……)。
自分自身で考える活動を取り入れることで、子どもたち自身の中に学習内容を落とし込むことができます。
次に、クリエイティブな活動を取り入れることで、学習内容に興味を持たせることができる、という可能性があります。
これまでの私の教員としての経験ですが、子どもたち自身で主体的にモノを考えたり、実際に何かを作ってみるような活動をすると、子どもたちは活き活きと取り組んでくれることが多いように思うのです。
学習内容に興味を持つことができれば、理解度や成績の向上にも繋がります。クリエイティブな活動はただ楽しいだけではなく、教育的な成果を出すポテンシャルを秘めていると考えます。
クリエイティブな活動を授業に取り入れよう
今回の記事では、クリエイティビティの大切さ、そして、教育にクリエイティブな活動を取り入れる意義について、考えてみました。
それでは、どのような活動をすれば、クリエイティブな活動になると言えるのでしょうか。また、実際の教育現場にどのように取り入れていけば良いのでしょうか。なかなか難しい問いですね……!
次回以降の記事で、私の考えるクリエイティブな活動についてご紹介していきたいと思います。授業だけでなく家庭学習の際にも、何らかのヒントになると幸いです。
参考資料
(1) 平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介
(2) いま話題の「STEAM教育」とは ICTを活用して創造性と問題解決力を育む、教科を超えた21世紀の学び | 東京すくすく | 子育て世代がつながる