こんにちは!math channelのしっしーです。これまでの連載「しっしー先生の探究ノート」では、「クリエイティブな学び」「対話的な学び」という観点から、教え方・子ども達との関わり方についてお話してきました。今回の連載では内容がガラリと変えて、算数と英語のコラボレーションを扱います。
私はこれまで中学校、高校などで英語の講師として働いてきました。英語という切り口から、算数・数学の新たな面白さを発見してもらえるような記事を作る。このことは元々頭にあったアイデアの1つでしたが、今回執筆する機会をいただきました。連載初回となるこの記事では、英語で意外な算数・数学用語を一緒に学んでいきましょう。あなたはいくつ分かりますか?
時計の長針・短針
さっそくですが、学校・ご家庭で、時計について子どもに説明することを想像してみてください。
時計って何?
時計を見ると時間が分かるよ。時計には長針と短針があってね……。
さて、アナログ時計の働きを説明する際、「長針」「短針」という言葉が必ず出てきます。小さな子どもに対しては「長針」「短針」を言い換えて、「長い針」「短い針」として、「短い針が3の時、3時だよ」などと説明するのではないでしょうか。
ここで問題です。長針・短針は英語で何というでしょうか?糸を通す「針」は”needle”なので、”long needle”、”short needle”でしょうか。いいえ、実はもっと身近な単語を使うのです。
正解は”hand”を使って、長針を”long hand”、短針を“short hand”と呼びます。
「なんで手?」と思われるかもしれません。語源辞典によると、”hand”は「指し示すという手の機能から時計の針」という意味でも使われるようになったということです1。
英語ネイティブスピーカーの子どもは、まず身体の一つの部位として”hand”を覚えた後、「時計にも”hand”があるんですよ」と学ぶのでしょう。日本人が「長い針が・・・」「短い針が・・・」というよりも、ピンとくるかもしれませんね。
これはあくまで想像ですが、昔の時計の長針、短針はもっと「針」のように先の鋭くて細いものだったのかもしれません。今は色々な形の時計があって、針の形が太いものもあれば先が鋭くないものもあって、ややこしく(?)なってしまっています。この機会に子ども達と一緒に、身の回りの時計の「針」の大きさや形をチェックしてみてください!
定規
次に算数の道具についてみていきましょう。算数の道具と言えば誰もが知っている「定規」。さっそくですが、英語で「定規」は何というでしょうか?意外と思い浮かばないですよね。
正解は”ruler”(ルーラー)です。元の単語は”rule”。そう、皆さんご存知の「ルール」です。”rule”に”-er”という要素がついています。この-erは「〜に関わる人・関係するもの」という単語を作るのですね。
“ruler”は、ルール(規準)を作る「支配者」という意味もあるのですが、長さの規準に関係する「物差し・定規」という意味で使われることが多いです。(せっかくなので、Googleで画像検索してみましょう!”ruler”と検索すると、定規の画像がたくさん出てきます。)考えてみると日本語の「定規」も、「規」準を「定」めるものということですよね。
少し脱線しますが、せっかくなので他の計測器具も合わせて見ていきましょう。日本語の「メジャー(巻き尺)」は英語では何というか知っていますか?
これは英語ではtape measureとなります。measureは「測る」という意味の動詞です。「メジャー(巻き尺)」は長さを測るもの、そのままですね。
最後に「体重計」は英語で何というでしょう?
これは”(bathroom) scales”などと表現します。日本語でも「スケールが大きい」といいますよね。scale (スケール)には「規模・縮尺」という意味もあるのですが、「体重計」のような重さを測る道具も表すのです。
定規の話から道草を食って、少し話の「スケールが大きく」なってしまいました。
“figure”の意味
ここまで、先に日本語の単語を見て、英語で何というかを紹介しましたが、今度は逆に英語の単語から日本語の意味を想像してみましょう。”figure”(フィギュア)というと、みなさんはどんな意味を想像しますか?
キャラクター模型としての「フィギュア」、冬のスポーツの「フィギュアスケート」などが思い浮かぶ人がいるかもしれません。実は”figure”という単語は多義語(=いくつもの意味がある単語)で、算数的に大切な意味もいくつかあります。さあ、何だと思いますか?
正解は、「姿」「人物」「(図)形」「図」「数字」など。”figure”にはこんなにも色々な意味があるのです!辞書や語源辞典によると、元々は「数字」「(人やモノの)姿・形」という意味で使われていたそうです。そして「姿・形」の意味から、「人物」「図」「図形」という意味で使われるようになりました1, 2, 3。
キャラクターの模型という意味の「フィギュア」は「人物」の意味からくるのだと思います。そしてフィギュアスケート(figure skating)は実は、元々氷の上を滑って「図形」を描く競技のことを指します。ご存知でしたか?
ちなみに論文などで「図2」という際は、英語では”Figure 2”と言います。
では最後に応用編の問題です。”figure”には「数字」という意味がありました。英語で1桁の数(1から9までの数)、2桁の数(10から99までの数)はなんというでしょうか?
正解は、1桁の数は”single figures”、2桁の数は”double figures”です。figureは「数字」の意味から「桁」を表すこともできます。こんな言い方で表現できるのですね!
英語を通じて算数・数学の面白さを再発見する
いかがでしたでしょうか。今回は”hand”、“ruler”、”figure”という単語を紹介しました。「長針・短針」「定規」はとても意外な英語で表せるのが面白いですね。日本語で学ぶと、例えば「長さを図るもの=定規」とただ暗記するだけになってしまいますが、英語の言い方を知ることで、より「定規」という言葉やモノ自体に愛着を感じられるのではないでしょうか?
また、日本語の「図・(図)形・数字」が英語では全て”figure”という単語で表せることもなかなか興味深いですね。算数と英語など、ある教科で学んだことが別の教科で活きてくる。そこには、点と点が線で繋がる学びの楽しさがあります。そんな教科横断的な学びの面白さを感じてもらえればとても嬉しいです。
今回の単語の話から少し広げて、次回は算数・数学の英語表現を一緒に見ていきたいと思います。また次の記事でお会いしましょう!
参考資料
(1) 英語語義語源辞典(三省堂)
(2) 英語語源辞典(研究社)
(3) figure_1 noun – Definition, pictures, pronunciation and usage notes | Oxford Advanced Learner’s Dictionary at OxfordLearnersDictionaries.com
■「math×〇〇」こんなコラボも!