こんにちは!ライターのひろぴかです!
数あるグリム童話の中で有名な話の一つが「ヘンゼルとグレーテル」。
お菓子で作られた家が登場することでおなじみですね。この話を一度でも目にした誰もがこう思ったのではないでしょうか?
「あの家でお菓子を腹いっぱい食べたい!!」
壁一面に敷き詰められたビスケットや周りにある甘そうなケーキ、屋根の上にそびえたつ弾力のありそうなプリン……まさにスイーツパラダイス!
そんな夢の家ですが、ふと気になることが。もし実在するなら、どれくらいのお菓子が必要なの?
通常の家を建てるのに必要な、莫大な量の材木に匹敵するお菓子の量。考えるだけで途方に暮れてしまいます。そもそも素人には算出する方法すら思い浮かびません!
そこで今回は、小学館さんが刊行している「世界名作おはなし絵本」シリーズの『ヘンゼルとグレーテル』の表紙の絵を参考にしながら、数学の専門家の協力を仰ぎ、「お菓子の家建築に必要な分量」を算出してみたいと思います!
建築に必要なお菓子の分量をどう算出するか?
そもそもどうやって算出していくのでしょうか?
今回のケースではこのように考えてみましょう。
- 間取りを推定する
- 壁の建築に必要なお菓子の量の算出
- 屋根の建築に必要なお菓子の量の算出
お菓子の家にもいろいろなイメージがあるので、今回は永井郁子さん作の絵をモデルにします。絵では円柱のような形をしていますが、わかりやすいように立方体で考えていきましょう。
1.間取りを推定する
間取りの推定はどうすればよいのでしょうか?
まずは部屋の中に何があるかを把握して、その条件でどれくらいの間取りが必要か考えるのがよいでしょう。
確かに内部から考えないと大きさはわかりませんからね。
まず、子どもたちを寝かせる場面があるということはベッドがあり、魔女が待っているということで机や椅子がありそうです。
あとは暖炉と最低限の水回りは必要だろうということで、どれだけ小さく見積もってもワンルームくらいの間取りではないでしょうか。
ひょっとしたら他にも部屋やスペースはあるかもしれませんが、一旦は最小限の家を建てるという前提ですね!
こんな感じでしょうか。ワンルーム、すなわち3.6×3.6平方メートルの8畳くらいでしょうかね。
ふむふむ。
間取りとあわせて高さも設定しましょう。子どもを誘い込む家という前提なので、今回は少し低めに2mということにしますかね。
2.壁の建築に必要なお菓子の量の算出
いよいよ材料の計算ですね!でも、どこから手をつければよいのでしょうか?
建築する側の視点に立って、壁から考えてみましょうか。参考にしている絵本を見ると、壁はビスケットでできているように見えます。
かなり敷き詰められているように見えますね。
ビスケットにもいろいろな種類や形がありますが、わかりやすいように1辺5cmの正方形のビスケットを使用することにしましょう。先ほど書いた立方体の画像と照らし合わせると、壁1面の建築に必要なビスケットの枚数がわかります。
たった壁1面で3000枚近くのビスケット……頭が痛くなってきます。
さらに壁は4面あるので、2880×4=11520枚が壁の建築に必要なビスケットの枚数となります。
死ぬまでに1度でいいから「1万枚超えのビスケットの壁」、見てみたい(笑)。
余談ですが、重さや金額で表しても面白いかもしれませんね。重さでは仮に1枚10gとすると約10万g(約100kg)、金額的には1枚10円とすると約10万円かかります。……あれ、意外と安い?
1万枚超えと聞くと強烈ですが、金額的には意外と現実的な気がします(笑)。
3.屋根の建築に必要なお菓子の量の算出
続いて屋根の建築ですね!材料としてはフィナンシェのように見えますけど、どう算出しましょうか?それに1つあたりのフィナンシェが恐ろしく大きい気がするのですが…。
絵を見ると、屋根には大きなフィナンシェが20個ほどでできています。壁の大きさから鑑みて、材料となっている大フィナンシェ1つの大きさは推定で縦:横:高さ=20cm:40cm:60cm。
普通のフィナンシェって縦・横・高さいずれも、そこからゼロをなくしたくらいの大きさだったような……。
そうですね。すると、この大フィナンシェ1つの大きさは通常のサイズの縦10倍×横10倍×高さ10倍=1000個分となります。
デカッ!1000個分のフィナンシェを一つにして焼き上げる方法は数学で解決できますか?
残念ながらできません。屋根の材料づくりには大きな疑問が残りますね。
ビスケットと同じくたくさん必要なのはわかりました。もう驚かなくなりました(笑)。
お菓子の家の夢を壊す装飾たち
壁と屋根を作れれば、あとは周りの装飾ですね!
- 屋根のバケツプリン
- 窓
- 扉
- 煙突
これらはすべて、おそらくスポンジ的なものだと思われます。そうでないと重さなどの問題で家が崩れます(笑)。
え!あんなに立派なクッキーや生クリームがこれでもかと乗っているのに、ニセモノだなんて……。
まずバケツプリンは大きいと自重で潰れてしまいます。これはプリンの形をしたなにかで、まぁスポンジくらい軽いものだと思います。
家のシンボルかのような存在感なのにダミーだとは!
本物のプリンだとしても子どもが届かない位置にありますから。魔女はそういうことも計算していたのかもしれません。
扉もそうです。ぱっと見だとクッキーのように見えますが、とてつもなく軽い材料にするか、もしくは中に金属を仕込まないと扉としての機能が成立しません。いずれにしても普通のお菓子のままではないでしょう。
クッキーの扉の中に金属が入っていたら一気に冷めそうです(笑)
物語のもう一つの真実。魔女はリアリスト!?
お話を聞きながらふと思ったのですが、子どもがお菓子を食べることで家が崩れてしまうことはないのでしょうか?
人が一日に食べられる量って1~3kgくらいと言われています。子どもは1kgくらいでしょう。
そうですね。
今回考えたお菓子の家の総量を考えてみましょう。壁は全部で約100kg、それを踏まえるとフィナンシェでできた屋根は50kg程度でしょうか。あとはプリンをはじめ装飾関係をすべて足しても50kgくらいと考えれば、家の総量は少なく見てもおよそ200kg。
意外と重いんですね!
作中のように2人で1kgずつ計2kg食べても、総量200kgに対し1%あまりなので崩れる心配はほぼないと思います。
なるほど!ということは、子どもたちが食べた後に魔女が材料を継ぎ足しているイメージでしょうか?
一つの考え方として賞味期限があると思います。おそらく2週間、もって1か月だと思いますが、200kgの材料を毎回作り直すのは明らかにコスパが悪い。
そうすると食べられた部分だけ修繕していっているのでしょうね。
はい。しかも子どもたちの食べる部分はだいたい決まっているでしょうから、賞味期限切れの箇所はかなりあると推測できます。
子どもの身長だと屋根には届かないでしょうから、フィナンシェは腐っている可能性もありますね(笑)。屋上にあるプリンが偽物だというのも納得できます。
プリンらしきものはもはや乾燥しているでしょう。ドライフラワーレベルで。そういう意味では崩れることはないので安心ですね。そのへんも含めて魔女は家づくりを最適化している気がします。
お菓子の家を作るというロマンチストな発想を持つ魔女ですが、実は相当なリアリストじゃないでしょうか(笑)。
まとめ
以上で、お菓子の家が実在した場合、建築に必要なお菓子の量を算出することができました。メインとなる壁と屋根は、ビスケット1万枚とフィナンシェ2万個程度が必要です。今回は永井郁子さんの絵を参考に、かつわかりやすい形状での算出ですので、あくまで参考程度に留めておいてください。
もしどこかでお菓子の家を見つけたら、1人で食べる分には崩れる心配もないので心ゆくまでお腹に詰め込みましょう!!
■『ヘンゼルとグレーテル』ってどんな話だったっけ?と気になった方は……
ヘンゼルとグレーテル (世界名作おはなし絵本)
作:寺村 輝夫 絵:永井 郁子
小学館刊