= (イコール)が見せるいろいろな顔【応用編】~定義からプログラミングまで~

前半の「基礎編」では、等号(=)が算数や数学の中でどのように使われているかを、できるだけ身近な例を用いて見てきました。計算結果を示すしるしとしての等号から出発し、小学生の皆さんにもなじみのある内容を中心に、等号の基本的な役割を確認しています。

それに対して、この「応用編」では、等号を「使う」立場から一歩進み、その意味や役割そのものを考える視点で眺めていきます。
等号によって概念を定義したり、式を置き換えたり、さらには数学を離れてプログラミングの世界で使われる場合まで扱います。

そのため、内容は主として中学生以上、あるいは記号の使われ方について少し立ち止まって考えられる読者を想定しています。小学生の読者には難しく感じられる部分もありますが、基礎編で見た等号が、どのように役割を広げていくのかを感じ取ってもらえれば嬉しいです。

基礎編と応用編は別々の話ではありません。
「=」という一つの記号を、理解の深さに応じて見直していく連続した話としてお読みください。

7) 定義式

定義式は、新しい言葉や記号を「こういうものです」と宣言するために使われる等号です。
たとえば「円の面積 S = πr2」という式では、左側の「S」は右側の式で表される量であると定めています。

このように、等号は単に値の等しさを示すだけでなく、概念に名前を与える役割も果たしているのです。

8) 同値変形

等号の重要な役割の一つに、式の意味を変えずに形だけを変える同値変形(どうちへんけい)があります。

方程式を解く際、等号で結ばれた左辺と右辺に同じ操作を施しても、そのバランス(等しさの関係)は崩れません。この性質を利用して、元の方程式と同じ意味を保ったまま、解きやすい形へと変形していくことができます。

例として、方程式を解くプロセスを取り上げてみましょう。次の方程式を考えます。

3x + 5 = 2x + 11

①両辺から 2x を引く

左辺と右辺から同じ量を引いても、等号で表された関係は維持されます。
x + 5 = 11

②さらに両辺から 5 を引く

x = 6

このように、「=」というルールを守りながら両辺に同じ操作を加えていくことで、最終的に x の値を導き出すことができました。最初の方程式と、最後に得られた「x = 6」は、数学的には同じ内容を表していると考えます。

この「両辺に同じ操作をする」というプロセスを、より手短に捉えたものが移項です。移項とは、「符号を変えて反対側に移す」と表現されることが多い操作ですが、その本質は同値変形にあります

まとめると、同値変形は「式の意味(解)を変えずに変形する」という考え方そのものを指し、移項は同値変形を行うための実用的な手順(テクニック)だと言えるでしょう。

9) 和・積の展開

数学では「Σ(シグマ)」記号を使って、多くの数を順番に足し合わせます。これは総和記号と呼ばれています。

総和記号に現れる「k = 1」という等号は、合計の開始位置(初期値)を指定するためのものです。これは、プログラミングにおけるループの初期化に近い役割を果たしています。

この等号は、「どこから計算を始めるか」を設定するための記号として機能しており、数の等しさを主張する通常の等号とは役割が異なります。
このように等号は、単なる「結果を示す記号」ではなく、「処理の始点を定める記号」としても使われているのです。

なお、総和記号の兄弟が相乗記号と呼ばれるもので、「Π(パイ)」記号を使って、多くの数を順番に掛け合わせます。

10) 代入(数学とプログラミングとの違い)

プログラミング言語では、「=」が代入を意味することがあります。
たとえば「x = x + 1」という式は、数学では成り立ちませんが、プログラミングでは「x に 1 を足した値を、新しい x とする」という意味になります。

このように、同じ記号であっても、文脈や分野が変わると意味が大きく異なることがあります。等号は、その代表的な例と言えるでしょう。

おわりに

応用編では、「定義」「変形」「計算の省略記号」、さらには「プログラミングでの代入」など、等号(=)がさまざまな場面で異なる役割を担っていることを見てきました。

基礎編と応用編を通して振り返ると、「=」は単に計算の答えを示すための記号ではなく、ものごとの関係を整理し、同じ内容を別の形で表現するための道具であることが分かります。等号は、数や式だけでなく、考え方そのものをつないでいるのです。

私たちは日常的に「同じだ」「変わらない」「意味は同じだが形が違う」といった判断をしています。数学における等号は、そうした判断を最も厳密な形で表した記号だと言えるでしょう。

何気なく使っている「=」を少し違った目で眺めてみることが、数学だけでなく、物事の見方そのものを広げるきっかけになれば幸いです。

                                           

(文責:みうら)

著者プロフィール 数学博識王みうら(三浦章)

みうら(三浦 章) math channelマガジン数学博識王

国立市在住。東京工業大学大学院修士課程を修了後、通信キャリヤで30年ほど通信サービスの研究実用化に従事。15年ほど前に、大学教員に転身。情報システム、数学、問題解決フレームワーク等を教えてきました。5年ほど前から地元公民館で月2回程度市民向け数学教室も開催しています。近頃は数学的背景のあるパズルに興味があり、その内容の発信にも関心があります。博士号(工学)、高校教員免許(数学)あり。

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この記事を書いた人

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国立市在住。東京工業大学大学院修士課程を修了後、通信キャリヤで30年ほど通信サービスの研究実用化に従事。15年ほど前に、大学教員に転身。情報システム、数学、問題解決フレームワーク等を教えてきました。5年ほど前から地元公民館で月2回程度市民向け数学教室も開催しています。近頃は数学的背景のあるパズルに興味があり、その内容の発信にも関心があります。博士号(工学)、高校教員免許(数学)あり。