「問題文の意味がわかる」とは?/連載「タキザワ流、合格力がつく!中学受験算数ガイド」【Vol.10】

お久しぶりです。
中学受験算数ナビゲーターの滝澤です。タキザワ流の連載についてはしばらくお休みをいただいておりました。ここのところは、「中受算数お悩み相談室」にてさまざまな私なりの考え方をお届けしていましたが,ご覧になっていただけましたでしょうか。

さて、久しぶりの連載再開ということで、今回の記事では何を題材に書こうか悩みました。
そこで、「普段の私の算数の授業でのこだわり」をヒントにテーマを決めました。

ふだんの授業で心がけていること

ふだん私は小4~小6まで、最難関と呼ばれる中学入試の算数の授業を担当している訳ですが、私の算数の授業でのこだわりは、できるだけ説明は短めにして、問題を自分で取り組んでもらう時間を長くとることです。「先生の説明がわかりやすい」ことはある意味諸刃の剣で、本来生徒が考えるべきことをはじめから教えてしまっているからわかりやすく感じるということもある訳です。さらに問題の解説もできる限り全体への解説授業ではなく、一人ひとりに質問をしてもらってできる限り自力でたどり着いてもらえるようにしています。

そこで受ける質問には「問題の意味がわからない」というものもたくさんあります。また、「わかった!」と言っても解けないことも多くあります。

今回のテーマは「問題の意味がわかるとは?」

「わかる」ということはある意味とてもあいまいです。気分と言ってもいいかもしれません。しかし、気分でわかったつもりになっても、問題が解けるとは限りません。今回は問題の意味がわかるとはどういうことなのか、何ができれば問題の意味がわかったと言えるのかをお伝えできればと思っています。

今回扱う問題は、女子学院中学2023年の 大問5です。

問題です。/2023年女子学院中学の 大問5

2023枚の折り紙をJ、Gの2人で分けるのに,同じ枚数ずつJ,G,G,J,J,G,G,J,J…の順に取っていき、最後にその枚数が取れなかった場合も順番通りの人が残りをすべて取ることにします。例えば、20枚ずつだとJは1020枚、Gは1003枚で、30枚ずつだとJは1003枚、Gは1020枚もらえます。

(1) 23枚ずつ取ると、Jは( )枚もらえます。

(2) (あ)枚ずつだとJは1023枚もらえます。ただし(あ)は素数です。

重要な言葉その1「例えば」

問題文の意味がわかるためには、重要なキーワードを覚えておく必要があります。まずは「例えば」。この言葉のあとには、問題文の条件に沿った具体例が書かれています。この具体例が本当にそうなるのかを試してみることが必要です。

「例えば、20枚ずつだとJは1020枚、Gは1003枚で、30枚ずつだとJは1003枚、Gは1020枚もらえます。」

問題文ではこのように書かれていますね。この文をただ読むだけではなく、実際に計算して検証してみましょう。

読むだけではなく、計算して検証する。

①20枚ずつの場合、

1周期、J,G,G,Jですから、ここまででJとGは40枚ずつ計80枚が配られています。

よって2023÷80=25 余り23 となり、25周期ですからこれだけでJとGは1000枚ずつもらうことになりますね。余りの23枚を、J20枚,G3枚取ることになるので、結局Jは1020枚,Gは1003枚もらうことになるわけです。

②30枚ずつの場合

1周期、J,G,G,Jですから,ここまででJとGは60枚ずつ計120枚が配られています。

よって2023÷120=16 余り103 となり,16周期ですからこれだけでJとGは960枚ずつもらうことになりますね。余りの103枚を、J30枚、G30枚、G30枚、J13枚と取ることになるので、結局Jは1003枚,Gは1020枚もらうことになるわけです。

ここまでできて、ようやく問題の意味がわかったとなる訳ですね。

それでは解答解説です

(1)はここまででやってきたことを1人あたりの枚数を23枚に変えて計算するだけですね。

つまり、「問題の意味がわかっていますか?!」という出題者の意図がよみ取れる訳です。

1周期、J,G,G,Jですから、ここまででJとGは46枚ずつ計92枚が配られています。

よって2023÷92=21 余り91 となり、21周期ですからこれだけでJとGは966枚ずつもらうことになりますね。余りの91枚を、J23枚、G23枚、G23枚、J22枚取ることになるので、結局Jは1011枚、Gは1012枚もらうことになるわけです。

よって答は1011枚です。

重要な言葉その2「ただし」

(2)が本番です。

Jが1023枚ですから、Gは1000枚ですね。(1)で考えたことも利用しましょう。JかGか少なくとも片方に配られた枚数の総数は、1回ごとに配られた枚数の倍数になっていましたよね。つまり

JかGのどちらかの枚数の約数が(あ)にあてはまる数です。

ここで(2)の短い問題文の中にとても重要な言葉が書かれています。

それが「ただし」です。

この言葉に続く条件はとても大切ですとという出題者のメッセージです。(あ)が素数であることがわかりますね。1023と1000を素因数分解してみましょう。

1023=3×11×31

1000=2×2×2×5×5×5

よって、(あ)にあてはまる数は、2,3,5,11,31のいずれかということになります。

2つの数の差に注目しよう。

1つ1つ試さなければならないのでしょうか。ここで2人に配られた折り紙の枚数の差に注目しましょう。Jが1023枚、Gが1000枚ですからその差は23枚ですね。

J,G,G,J,J,G,G,…と配っていくと2人に配られた折り紙の枚数の差は、1回に配られる折り紙の枚数より少ないはずです。よってあてはまる数は31です。

実際に試してみましょう。

1周期,J,G,G,Jですから、ここまででJとGは62枚ずつ計124枚が配られています。

よって2023÷124=16 余り39 となり、16周期ですからこれだけでJとGは992枚ずつもらうことになりますね。余りの39枚を、J31枚、G8枚取ることになるので、結局Jは1023枚、Gは1000枚もらうことになり、ちゃんとあてはまりますね。

大事なのは,「ちょっと待てよ」「試してみよう」

いかがだったでしょうか。算数の問題を解く上で「問題の意味がわかる」とは

「具体的な数字の例を出して正しく計算・検証できる」ことを指すということがわかっていただけたでしょうか。少しめんどうかもしれませんが、「わかった!」と思っても

「ちょっと待てよ、試してみよう」という考え方ができるようになると算数がますます得意になっていくと思いますよ。

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この記事を書いた人

御三家筑駒中学受験専門塾にて指導歴30年。「算数の楽しさは正解だけではない」「すべての小学生に算数の難問を解く楽しさを知ってほしい」と思い、math channnelに参加。算数表現力ゼミを主催。