野球が好きな子は、「確率」が得意になる!?野球に出てくる算数・数学雑学のお話

「確率」と聞くと、まず何を思い浮かべますか?

算数や数学で確率について話すとき、よく使われるのがサイコロです。

「1回振って3が出る確率は?」「2回振って2回とも3が出る確率は?」などを授業で習った記憶がある、という方も多いのではないでしょうか。
そして、「確率が苦手!」という方も多いかもしれません。

一方で、「確率が得意」とする傾向がある人たちがいます。
math channelの講座を受けている子どもたちの中でも確率が得意な子に聞いてみると、「野球が好き」だったり「野球をやっている」という子が多い印象があります。

なぜ、「野球好き」の子は「確率」が得意なのでしょうか?
その理由は、野球では日常的に「確率」が扱われているからではないかと考えます。
この記事では、野球が扱う確率について解説していきます。

村神様の2022シーズン打率「3割1分8厘」は、何パーセント?

プロ野球のニュースなどで、野球の打率が「何割何分何厘」といった数字の表記がされているのを聞いた事がある方も多いことでしょう。

例えば、2022年のシーズンで三冠王を達成し、「村神様」が流行語大賞にも選ばれたヤクルト・村上宗隆内野手の2022年最終成績は、打率3割1分8厘でした。

この「何割何分何厘」は、何パーセントの確率まで表示しているかご存知でしょうか?

  • 1割は、10%
  • 1分は、1%
  • 1厘は、0.1%

を指します。

つまり、1割=10%=0.1=$\frac{1}{10}$、1分=1%=0.01=$\frac{1}{100}$、1厘=0.1%=0.001=$\frac{1}{1000}$ということになります。

つまり、村神様のシーズン打率「3割1分8厘」は、31.8%=0.318になります。

分数や小数は、現在の学習指導要領では小学3年生から6年生までの間に段階的に学んでいきます。
にもかかわらず、野球が好きな子は早い段階で「0.001」「$\frac{1}{1000}$」というレベルの小数や分数を既に理解しているということになります。

このように、知らず知らずのうちに「先取り学習」となっているのかもしれませんね。

打率はなぜこんなに細かく表記されるの?

そんな打率や安打数という数字ですが、「なぜ打率はこんなに細かく表記されるのだろう?」とか、「安打数はどれくらいだと凄い記録なのだろう?」といったことを疑問に思ったことはないでしょうか?

実は、これらはプロ野球選手の打席数を考えてみることで答えが見えてきます。
そこで、プロ野球選手の打席数についてフェルミ推定していきましょう。

日本野球機構のプロ野球は、試合を行う期間と、試合を行わない休みのオフシーズンがあります。3月末に開幕し、10月前半のリーグ最終戦を迎えます。

試合を行う期間を年間の内の7ヶ月と仮定すると、1ヶ月≒30日が7ヶ月分なので、

$$30×7=210$$

210日間が試合を行う期間になります。

しかし、210日間毎日試合を行うわけではありません。
試合を何日か行って、試合のない何日かを休むというサイクルがあるはずです。
では、試合が6日間、休日が4日間というサイクルであると仮定しましょう。

すると、試合を行う日数は

$$210×\frac{6}{10}=126$$

1年で約126試合を行うという計算になります。

ちなみに、実際の1球団当たりのプロ野球の年間試合数を調べてみると、143試合なので、それほどズレていないことがわかります。

プロ野球選手の打席数をフェルミ推定

続いて、同様に数字を仮定してプロ野球選手の打席数について求めてみましょう。

プロ野球1試合で、1人の選手は何回打席に立つのでしょうか? それを考えるためにまず、1試合で1チーム全選手の打席数がどれくらいあるのかを考えます。

野球のルールでは、基本的に1試合は1チーム27アウトで終了です。
また、プロ野球選手の平均の打率は2割5分程であるという仮定をします。
つまり、2割5分の確率でアウトにならないまま次の選手に打席が回り、残りの7割5分の確率でアウトとなって次の選手に打席が回ることになります。

そこで、1試合で合計27アウトになった時の全打席数を計算すると、

$$27÷0.75=36$$

全部で約36打席であるということがわかります。

野球の1チームは9人なので、全36打席中一人の選手に回ってくる打席数を平均すると、

$$36÷9=4$$

1人約4打席ということになります。

先程、1球団当たりのプロ野球の年間試合数は143試合と言いましたので、一人の選手が年間で出る打席数は、

$$4×143=572$$

572打席となります。

それでは、野球での打率の表し方を思い出してみましょう。

「何割何分何厘」という表記の、「何割」は$\frac{1}{10}$、「何分」は$\frac{1}{100}$、「何厘」は$\frac{1}{1000}$という数字を表していますよね。

プロ野球選手の年間打席数は100から1000の間に収まっていますので、$\frac{1}{1000}$を扱う「何厘」までの表記はとても理にかなっているということになります。

プロ野球選手の生涯での打席数もフェルミ推定!

1年間だけでなく、プロ野球選手の生涯での打席数について考えてみましょう。

プロ野球選手の平均在籍年数は9年程だそうです。そこで、年間の打席数572打席を四捨五入した600打席として計算すると、

$$600×9=5400$$

プロ野球選手は平均して生涯で約5400打席出ているという計算になります。

最後にプロ野球選手の生涯での安打数について考えてみましょう。
先程の5400打席という数字と打率を掛け算すれば安打数を求めることができます。

例えば、打率2割の選手について計算してみると、

$$5400×0.2=1080$$

生涯で1080安打という計算になります。

続いて、打率3割の選手について計算してみると、

$$5400×0.3=1620$$

なんと、生涯で1620安打という計算になりました。

ここで注意したい点は、今回の計算では1人の選手が9年間怪我などで試合を休むことなく、フル出場した場合しか計算していない点です。そのため、実際はもっと打席数が少なくてもおかしくはないでしょう。

このように計算して考えてみると、よくニュースになっているプロ野球選手達の「1000安打」「2000安打」という記録が、いかに素晴らしい記録か実感が湧いて来るのではないでしょうか?

2023年現在の2000本安打達成者は54人!

いつの間にか算数・数学の力が身につく!

野球が扱う確率のお話、いかがだったでしょうか。

野球が好きな子たちは、ごひいきの球団や選手の活躍を追っているうちに、いつの間にか確率についての考え方が身についているのかもしれませんね。

野球に限らず、様々なものの中に算数や数学の考え方が潜んでいます。

math channelマガジンでは、これからも身の周りに潜む算数・数学について取り上げていきます。

どうぞお楽しみに!

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